今日は朝からログインしたんだけど その5
街に来ていた俺達。
ファムの説明によると……
「不要になった仲間キャラは級(クラス)によって買い取り価格が決まっていまして
レア級 1000G
アンコモン級 500G
コモン級 100G
といった具合です。
レベルによって多少値段が前後する感じですね」
ってことらしい。
その言葉を頷きながら聞いていた俺。
「へぇ……じゃあレアより上のS級とかになるとどうなるんだい?」
「S級以上の仲間キャラは売買禁止になっているんです」
「え? そうなの?」
俺がびっくりしていると、エカテリナがドヤ顔をしながら俺の前に移動してきた。
「S級以上の仲間キャラも最初の頃はNPCが1体10000Gで買い取りをしていたのですわ。でも、S級以上の仲間キャラは仲間キャラ同士で融合させたり武具と融合させることでスキルレベルを上げたり、レアなスキルを付与させたりすることが出来るものですから、プレイヤーの間での売買が過熱していったのですわ。中には、素材として優れている仲間キャラを強引な手法で買い占めて、それを暴利で転売するプレイヤー集団が出現するに至り、運営によってGでの取引が停止されてしまったのですわ」
「そうなんだ……じゃあ、今はS級以上の仲間キャラは取引されていないってことか……」
「一時はそうなっていたのですが……1ヶ月もしないうちに『同級同士の交換は可能』という新制度が導入されたのですわ」
「へぇ、そうなんだ……しかし、なんでまた……」
「運営は正式には認めていませんけれども……一般に言われていますのは、取引が停止になったことで課金ガチャの売上が想像以上に減少したためじゃないかって」
そう言うと、大きなため息をつくエカテリナ。
「……あぁ、なるほどなぁ……」
確かに、このゲームを運営していくためには常に一定の売上を維持していかないといけないわけだしな……まぁ、俺も会社勤めしているのでそのあたりはわからないでもない。
ただ……エカテリナが運営の裏話をしていると、運営の中の人が操作している疑惑が取り沙汰されているファムさんが笑顔を引きつらせているような気がしないでもないというか……
◇◇
掲示板的な話題はここまでにして、俺は早速NPCを買い取ることにした。
NPCの買い取りを行っているNPCの近くで、
『ノーマル仲間キャラ 110Gで買います』
ってウインドウを表示させた俺。
ちなみに、NPCが販売しているNPCの仲間キャラを購入することも考えたんだけど、NPCの売買人って100Gで買い取った仲間キャラを200Gで売ってるんだよね……
で、このウインドウなんだけど……売買を行う際に、その条件を表示させるためのものなんだ。
ポーションを販売していた時には、このウインドウに気がついてなかったんだけど、他のプレイヤーが使用しているのを見て、その存在に気がついたんだ。
街道のまん中にゴザを敷いて、その上にウインドウを表示させて、扱っている商品とその値段を一覧にして表示しているプレイヤーが結構いるんだよね。
ちなみに、そういったプレイヤーが扱っている品物の大半は、モンスターを討伐した際に入手したドロップアイテムや、使わなくなった武具だったりする。
中には薬品系の商品を販売しているプレイヤーもいるにはいるんだけど、そのほとんどが
『蘇生薬』
『全異常回復薬』
といった、S級以上の薬だった。
「あんな薬も作れないのかなぁ?」
って、俺が呟くと、ファムさんは、
「調合で作ることは可能ですが、素材集めが大変なのと、ドロップアイテムで入手する方が手軽ですので、試そうとされるプレイヤーはほとんどいませんね」
そう説明してくれた。
なんていうか……聞けば聞くほど、このゲームってモンスター討伐に特化しまくったゲームなんだなぁってことを実感してしまう……とはいえ、まぁ、そんなゲームの中とはいえ俺みたいに農業や調合に特化したプレイをしようっていうプレイヤーが一人くらいいても悪くないんじゃないかな。それに、イースさんみたいにモンスター討伐と農業の両方やってるプレイヤーもいるわけだしね。
俺がそんなことを考えていると、
「へぇ、NPCより高く買い取ってくれるんだ」
「じゃあ、お願いしようかな」
そんな感じで、俺のところにキャラを売りに来てくれるプレイヤーがすぐに現れた。
中には、
「3人まとめて売るからもうちょい高く買い取ってよ」
なんて交渉をしてくるプレイヤーもいたんだけど、そんなプレイヤーには装備を褒めたりして、ひたすらこっちが下手にでて、気持ち良くなってもらって最終的にこっちの言い値で納得してもらった。
まぁ、このあたりの交渉に関しては、リアル会社で新人時代に営業をやってた俺の得意分野といえなくもない……とはいえ、あまりに上から目線でとんでもない条件を突きつけてきた相手をぶん殴って、取引先をひとつ駄目にしたことがあるだけに……っと、いけねぇ、いけねぇ、ゲームの中くらいは黒歴史は忘れないとな、うん。
と、まぁ、そんなわけで……
ものの30分もしない間に、俺はノーマル仲間キャラを10人買い取ることが出来た。
ゴブリン♀が1人と、人種族の♂が5人・♀が4人という内訳だ。
みんなを荷車の方へ移動させていると、人種族の女性がおずおずと手を挙げた。
「あの、ご主人様は私達をどうなさるのですか?……モンスター討伐の際の囮ですか?」
「囮?」
人種族の女~ステータスウインドウには『町娘テテ』って表記されているんだけど、後で名前を変更することが可能みたいだ。
「テテ、その囮って……」
「はい……モンスター討伐を行う際に、我々を大量にモンスターに突撃させて、モンスターが私達を攻撃している間にご主人様がモンスターを討伐なさるのではないのですか?」
「私達のような、なんの役にもたたないNPCをこんなに大量に買い取られるということは、それ以外に理由があるとは思えないといいますか……」
テテの後方にいた仲間キャラがそんな言葉を発しながら、エカテリナの方へ視線を向けていた。
あぁ、そっか……確かにエカテリナはモンスター討伐をメインにしているプレイヤーだもんな。
そう考えても不思議じゃないか。
「いや、君達には俺の農村で畑仕事を手伝ってもらおうと思っているんだ」
「「「畑仕事!?」」」
俺の言葉に、仲間キャラの全員が目を丸くした。
……って、あれ? なんか嫌がられたのかな?
「あぁ、もちろん無理強いをする気はない。ちゃんと休憩時間は設けるし、食事もしっかり準備させてもらうしだな……」
少し慌てながらみんなに向かってそう言っていると、仲間キャラのみんなが俺の周囲を取り囲んできた。
「ほ、本当に農業をさせてもらえるのですか!?」
「あ、ありがたい! それなら私達でもお役にたてます!」
「あぁ……モンスターの餌食にならずに済むなんて……」
「本当にありがとうございます」
「あぁ、素晴らしいご主人様に巡り会えた……」
俺の周囲を取り囲んできた仲間キャラのみんなは、口々に歓喜の声をあげていた……っていうか……そんなに喜んでもらえるなんて思ってなかったもんだから、なんだか照れくさくなってしまったというか……
んで、俺が照れ笑いしながら後頭部をかいていると、俺の前にエカテリナが駆け寄ってきた。
「みんなよりも、私の方がだ、旦那様のことを大事に思っているんだからね!」
とりあえず自分の立ち位置をはっきりさせておきたかったんだろうな……まぁ、あい変わらずのツンデレなんだけど……なんか、そのツンデレもこれだけ貫かれると、ちょっと可愛く思えてきたというか……
そんなエカテリナに、仲間キャラのみんなは
「「「よろしくお願いいたします奥様!」」」
一斉にそう言い、一斉にお辞儀をしていったんだけど……それを受けてエカテリナってば、
「わ、わかればいいのよ、わかれば……」
って、顔を真っ赤にしながら腕組みしていた……
多分、奥様と言われるとは思っていなかったもんだから、内心ドッキドキなんだろうな……
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