おっさんですが、巨乳でコミュ障な年下女と新婚生活はじめました~ゲームの中のお話ですが……

鬼ノ城ミヤ

俺 meets パッツンパッツンな女 その1

 俺の名前は武藤浩。

 まぁ、どこにでもいるおっさんだ。

 それなりに鍛えてはいるものの、年相応にお腹周りが少々気になり始めている……って、まぁ、そりゃ若い時のようにはいかんわな……


 そんな俺だけど……会社では係長って役職に就いている。

 世渡りが上手い方でもない……っていうか、曲がったことが大嫌いで、納得出来ないことには噛みつく、思ったことは全部口にすると、まぁ……この、めんどくさい性格が災いして、四十路を前にしてようやくこの役職にたどり着けたってのが正確なところだったりする。


 世渡りの上手い同期の中には主幹や課長、中には部門長になってる奴もいる……っていうか、まぁぶっちゃけておくと俺が一番出世してないわけなんだがな。

 

 思うところがないと言えば嘘になるけど、毎日忙しそうに仕事と接待に明け暮れている同期のヤツらを見ていると、大して忙しくもない在庫保管部門の責任者として毎日残業することもなく、アフターファイブを満喫することが出来ることをむしろありがたく思っていたりもするわけだ。


 ……とはいえ、大卒でこの会社に勤務して20年近く。あと数年で四十路を迎えるわけなんだが、これ以上の出世は望むだけ無駄というか……ま、いつ肩を叩かれても、っていう覚悟だけはしてるんだがな……


 しかしまぁ……この年で趣味が読書と映画鑑賞くらいしかない俺の場合、無駄に長いアフターファイブの過ごし方となると、だいたいは食べることか寝ることくらいしか思い浮かばないっていうか……読書にしても主な読書はラノベっていう……『係長、何読んでいるんですか?』って部下に聞かれても、絶対に題名を言えないような本を読んでる身としては、もう少し何か高尚な趣味でも見つけた方がいいのかなぁ、と、思ったりすることも少なくないんだが……同期のヤツらのように上司に媚びを売って飲みに行ったり、接待ゴルフに行ったりなんて今更だし……別にいいじゃないか、なぁ……ラノベを読むのが趣味でもさぁ……まぁ、それをだ、もうじき40才を迎える冴えないおっさんが熱く語っても、説得力がいまいちっていうか……


 そんな事を考えながら、俺は帰宅途中にある行きつけの食堂で夕食を済ませた。


 この店、おかずのメニューが豊富な上に、安くて量が多い。その上味もいいんだよな。

 お腹まわりが気になるのもそのためっていうか……まぁ、いいじゃないか、見せる人も予定もないわけだし。


◇◇


 そんなある日の事……


『武藤係長、ちょっと人事部まで来ていただけますか?』


 内線電話で俺を呼びだしたのは、人事部の課長だった。

 課長とはいえ……向こうは出世コースのまっただ中を突き進んでいるエリート中のエリート、まだ20代前半にして、しかも女性でありながら異例の抜擢を受けているお方なわけなんだけど……その人事部の課長が俺を呼び出すなんて……まさか、早くも肩たたきってことなのか、おい……


 そんな心配をしながら、部屋の前でとりあえずネクタイなんかを直したりしてから人事部の中へ……


「武藤係長。お呼びだてして申し訳ありません」


 俺に向かってにっこり微笑んでいるのは、東雲春(しののめ はる)課長。

 我が社初の女性管理職だったりする。

 ……まぁ、10歳以上も年下で、それでいて俺より上の役職なんだよな、この人ってば……って、いかんいかん、年齢だけで人を判断しちゃあ……。まがいなりにも俺より上役なんだし……


 とはいえ、美人でスタイルもいい東雲課長は年齢・性別問わずにファンが多い。

 仕事が出来て、高学歴だがそういった事を一切ひけらかすことなく会社のみんなとも普通に接していて……その上、眼鏡が似合ういい女なわけで……クールビューティという言葉がこれほどマッチする女性を、俺は今までの人生の中で一度も見たことがない。

 その分、接待の席や会議の際には必ずといっていいほど連れ回されていて、毎日忙しそうなんだよな……疲れた顔をしていたのを見かけた時に、何度か缶コーヒーを奢ってやった……っと、奢って差し上げたことがあったっけ。


「業務ですのでお気遣いなく、東雲課長。で、私に何の御用でしょうか?」

「武藤係長は話が早くて助かります」


 そう言うと、東雲課長は俺に1枚の紙を差し出した。


「……履歴書?……」

「この度中途採用者を受け入れることになりました。武藤係長の在庫管理部門に配属しますので、よろしくお願いいたします」

「……はい?……あの、俺……じゃなかった、自分の部門に配属です?」


 いや……俺でなくても、疑問形になると思う。

 俺の部門は、責任者である俺を含めて3人しかいない……しかも、その3人で十分こなせる仕事しかあてがわれていない……まぁ、暇なことこの上ない職場だったりするわけで……人員なんて必要としていないというか……


「……そこに関しては、中途採用のために会社になれるためといいますか……まずは忙しくない部門で慣れてもらおうとの、上からの指示もありまして……察して頂けないでしょうか?」


 いつも斬れ味するどく結論を述べることを信条にしている東雲課長にしては、どこか歯切れが悪い物言いな気がする……この話、なんかありそうな気がするんだが……かといって、一介の係長でしかない俺には、


「わかりました。では、そのように」


 そう返答するしか選択肢はないわけで……


 一昔前の俺なら、

『納得いく説明をして頂けないなら、承諾出来ません』

 って噛みついただろうけど……まぁ、俺も年齢相応に丸くなったっていうか……何より東雲課長を困らせたくなかったってのもあったかな。


◇◇


 個人情報なんで、封筒に入れられて手渡された履歴書。

 俺は部屋に戻る前に、一度トイレで中身を確認していたんだが……


「……すげぇな、こいつ……」


 思わずそんな言葉を呟いてしまった。


 いや、何……学歴欄を見て唖然としたんだが……超有名な女子校から大学へ進学していて成績も常にトップクラス。

 超大手企業にでも就職出来ただろうに、こんな人材がなんでまたウチの会社のような中堅どころに、しかも中途採用? ……と、思わずにいられないというか……

「……なんか、嫌な予感がするというか……」

 思わず口に出して言ってしまったんだけど……まぁ、事実は事実。そう思っても仕方ない。

 東雲課長の歯切れの悪い物言いといい、なんか引っかかるんだよなぁ……

「……まぁ、気にしてもしょうがない。書類を見ただけで全てがわかるはずがないんだしな……」

 履歴書を封筒に戻すと、俺は部屋へと戻っていった。

 階段をあがって、その先に部屋の戸が……って、あれ?

 俺の部門の部屋の前。

 扉のところに、なんか女の子が立っている。


 女の子……一応スーツを着ているわけだし、成人はしているみたいだけど、どう見ても高校生くらいにしか見えないというか……それほどの童顔の割に、胸だけは異常に発育しているというか……すごいな、あれ……いったい何カップあるんだ、おい……


 思わずマジマジとその胸の辺りへ視線を向けていると……その女性は、胸を両手で隠しながら体を反転させていった。


 やべぇ……確実に俺の視線に気がついてる!?


「あ、あぁ……こんにちは。えっと、ウチの部門に何か用ですか?」


 取り繕うように愛想笑いを浮かべる俺……

 そんな俺を、その女性は眉間にぶっといシワを刻みながら俺を睨み付けている。


「……」

「……は??」

「……ヘンタイ」

「あ、あぁ……なんかすいません」


 低くか細い声で呟くように言う女性。

 その言葉に、苦笑を返す俺。

 やっぱ、俺の視線に気がついていたか……しかし、この女の子、俺の方を一切見ようとしない。常にうつむき加減で、表情が読めないっていうか……


「そ、そうですね、初対面の女性の胸を見るなんて、確かに変態と言われても仕方ないと思います。どうも申し訳ありませんでした」


 そんな立派な胸を誇張しようとしているようにしか見えない、パッツンパッツンのシャツを着て出歩いているお前さんにも問題があるんじゃないのか?……って、思わず言いたくなるのをグッとこらえた俺は、精一杯の愛想笑いとともに頭を下げた。

 すると、その女の子はようやく顔を少し上げた。

「……謝ってくれるんだ……『そんな立派な胸を誇張しようとしているようにしか見えない、パッツンパッツンのシャツを着て出歩いているお前さんにも問題があるんじゃないのか?』とか、言わないんだ……」

 ……って……せっかく気を使ってるっていうのに、自分で全部言っちまうのかよ……ってか、自覚あるのなら、他の格好してこいよ、まったく……


 しかしまぁ……俺に向かって警戒心バリバリな感じで身構えているその女性。

 この状態じゃあ、まともに話も出来やしない。


「まぁ、とにかく、中にお入りください。在庫管理部門にご用事なんでしょう?」


 俺は、先に立って部屋の戸を開けたんだが……その時俺はあることに気がついた。

 その女性……首から身分証をぶら下げていたんだけど、そこには『小鳥遊ひより』って書かれていて……あれ? 奇遇だな、さっき東雲課長からもらった新人の履歴書にも同じ名前が書かれていたんだが……

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