国営自死センター

@umakaruta

プロローグ

生きることこそが人にとって至上のモノになって数十年。

首都一極集中や核家族化の影響で地方は衰退、地域共同体は破壊されていった。

それに加えて政府が財政均衡を理由に国民保護の役割を放棄し始め自己責任論がはびこり国民同士の対立、そして分断を深めていく。

『勝ち組と負け組』が分断『若者と老人』の対立はもちろん、弱者が自分よりもさらに弱いものを叩いて自我を保ち、弱者から成り上がった者は「努力が足りないから弱者のままなのだ」と弱者を切り捨てる。

そんな社会であっても生きてさえいれば、生きてることこそが素晴らしいとされる…。

その欺瞞、歪み、怨嗟、混乱が限界を迎え一つの施設が生まれる。


国営自死センター


自死センターとは病気の有無にかかわらず死にたい者が安楽死するために生活する施設。

全寮制で規則正しい生活をしながらそれぞれが出来る範囲で出来る仕事をして自分が安楽死するための資金を貯めていく。



決まりとしては

・最低1年間は在籍しなければならない(元々資金がある人でも)

・入寮から1年半で最終的に自死するか退寮するかを決める

・思い直した者はいつでも出ていくことが出来る

・思い直し退寮した者でも1度だけ再入寮出来る(在籍期間が半年未満であれば新たに1年以上寮で生活、在籍期間が半年以上であれば半年寮生活を過ごせば自死できる)

・働けない、または資金が貯まりきらない者でも国からの補助金や個人の寄付金により寮での生活及び自死が可能

・遺書を書く(渡す相手が居なくとも必ず)

・遺産は自死センターに寄付することができる



自死センターの需要は年々高まり規模が拡大し、死を望む者たちの村のようなものが出来上がっていくのだった…。




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