もうすぐ200万PV感謝記念SS

 『Trick~いたずら~』


 Warning警告


 こちらは本編第211話までお読みいただいてから、こちらお読みください。

 でなければあまり面白くないです。意味も分かりにくいです。

 お読みでない方は、ブラバ必須です!推奨ごときではないです。

 絶対に第211話まで読んでからにしてください。

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 わたしの意識が宿ったのはまだ殻の中でした。



「お前たち、さぁもっと魔力を注ぎ込みなさい。わたくしにふさわしい魔獣を誕生させるのです」

「お嬢様、卵の中身は孵ってみなければわかりかねますが」

「わたくしに口答えは許しません。ビューラム。お前の魔力も送り込みなさい」


「恐れながらお嬢様。

 私めが魔力を送るとこの卵は私の従魔になる可能性が高くなります。

 卵が孵った後、お嬢様の御力で孵った魔獣を屈服させねばなりません。

 そのため、卵にお嬢様の魔力も送ることをお勧めいたします」


「愚かなこと。わたくしの卵は別にあるのですよ。

 どうしてあの下賤な女の手元にあった卵に高貴なるわたくしの魔力を渡さねばならないのです」


 ビューラムと呼ばれたこの中で一番魔力の強そうなヒトは呆れたようにため息をつきました。



 それはわたしも同じことでした。

 わたしは卵で自分の力だけで生きていくにはまだ弱いのです。

 だから守ってくれる存在が必要です。

 本来ならば親ですが、あるじでも良いのです。

 なぜだかそのことだけは知っていました。



 ですがこのヒトたちはわたしに魔力はくれるけれど、愛情はくれませんでした。

 魔獣にとって愛は最大の魔法。

 だからこそそれを与えてくれる主に従うのです。



 誰かよいヒトはいないか探していましたがこの中にわたしの主はいませんでした。

 ずっと孵りたくなくて我慢していましたが、わたしのこの体に魔力を溜め込むのももう限界です。

 だからわたしはこの場から逃げる決心をしました。



「皆の者、卵にひびが入った。そろそろ孵るころだ。お嬢様だけが魔獣と目を合わせるようにするため、皆離れて目をそらしているように。

 お嬢様は魔獣を屈服させるように、魔獣を見据えてくださいませ」

「何度も言わないで。わたくしだってわかっていますわ」



 お嬢様と呼ばれたヒトはわたしの側に立っているようでした。

 そのヒトの影は赤く、わたしの力にそぐわなく思いました。

 逆側は光が柔らかく差し込んでいます。

 私はその光を目指すことにしました。



 殻が割れ、わたしは初めて外に触れました。



「何よ! コレ。スライムじゃないの‼」

「何? スライムですと?」


「わたくしを馬鹿にして! このようなモノ、テイムなど出来ないわ‼」

 赤いヒトがきぃきぃ叫びだします。

 嫌な声です。


「お嬢様、お待ちください。このスライムは小さすぎる。

 これは特殊個体の可能性があります」

「うるさい! 即刻倒しなさい。

 このような卵は孵らなかった。ただそれだけですわ!」



 ビューラムと呼ばれたヒトが魔力を込めるのを感じたので、わたしは今までもらった力を使って光の方へ飛び出しました。


 何か固い透明なモノがありましたが、関係ありません。

 ぶつかるとガチャンと音がしただけで簡単に壊れる程度のものです。


 私はそのまま外に出ました。


 ここはどこなのでしょう? 全然わかりません。

 ガサガサとした緑色の中に私は落ちました。



「スライムが逃げた。即刻探し出して始末せよ」

 先ほどのビューラムと呼ばれたヒトが叫んでいます。

 その後ろでまだ赤いヒトはきぃきぃ言っています。

 不愉快です。



 ここは嫌です。

 わたしはありったけの力を使って転がりました。


 転がるには柔らかすぎるよりもそれなりに固さがある方がいいと、転がっているうちにわかりました。

 でも固すぎてもいけません。

 ちょうどよい固さをみつけるとわたしの転がるスピードが更に上がっていきました。


 とにかく行くあてはないけれど、心地の良いところへ行こうと思いました。


 ヒトは追ってきませんでした。

 わたしがまだ近くにいると思い込んでいるのでしょう。



 ずっと転がっていると緑ではなく茶色くなり、さらに転がっていると茶色から灰色の固いものに変わりました。

 でもこっちの方に心地よいものがあるようなのです。


 わたしは転がりました。

 どれだけ転がったのかわかりません。



 そしてとうとう着きました。



 そこは他の周りとは全然違う、背の高い大きなところでした。

 白いヒトたちが行き交い、カーンカーンと上の方から音がします。


 ここはどこなのでしょう?

 ここならばわたしの主が見つかるのでしょうか?



 すると何かに摑まれました。

 そのまま高いところに連れていかれます。

 わたしは別の魔獣に捕まってしまったのでした。



(フーン、せいぞくせいのスライムって、ソルはじめてー)

 からだに相手の『声』が響きます。

 これが心話なのですね。

 それでわたしも返してみました。


(わたしスライムです)

(あれっ? ちのうあるのー? なまえはー?)

(ありません。生まれたばかりです)

(ちかくでまりょくがさわがしいとおもったら、きみがうまれたのねー)

(たすけてください)



 ソルという魔獣は少し考え込んでいました。

(いいけどー、ソルたいくつなのー)

(はい)

(だからー、ともだち、なる?)

(なります!)

 たいくつも、ともだちも、なにかわかりませんが、悪いことではなさそうです。



(どうしたらいいかなー)

(主がいればいいと思います)

(あるじー? ソルにもいるよー)

 そのヒトはわたしの主になってくれるでしょうか?


(うーん、リカはすごくいそがしいの。ソルともなかなかおはなしできないのー)

(そうですか)

 ガッカリです。

 ソルはとてもよさそうな魔獣で、一緒にいて心地よかったからです。



(でもね、ひとりいるよー)

(どこにですか?)

(がっこうー)

 がっこうーとは何なのでしょう?

 わかりませんが、ソルに頼るしかありません。


(そのヒトはせいれんなのー)

(せいれん?)

(きよらかなのー。やさしいのー。がっこうーのまじゅうーたちのあこがれなのー)

(ソルも主にしたいですか?)

(ソルにはリカがいるから。リカもやさしーよ。でもきみにはせいれんがいいよー)



 それでソルに連れられて、がっこうーへ行きました。



 がっこうーでソルの主のもとへ行きました。

 誰よりも白いヒトでした。


 リカというそのヒトは、ソルと目を合わせると、

「サミー、ソルが私に話があるらしい。少し出ていてくれ」

「かしこまりました。廊下おりますのでいつでもお呼びください」

 それで側にいたヒトは部屋から出て行きました。



「ソル、何か連れているね。出しなさい」

 それでわたしはリカ、いえリカさまの前に出されました。


「ふむ、特殊個体のスライムか。どこで見つけてきたんだい?」

(きょうかいー)

「遊びに行ってたのかい?」

(きよらなおんがくが、きこえるひがあるのー)

「今日はあったの?」

(なかったー)


 それから私はこれまであったことを聞かれました。



「それでスライム君。君はどうしたいんだい?」

(主になってください)

「君の話を聞いていると、私が介入するとややこしくなる事情があるようだ。

 悪いが私ではなれない」

(そうですか……)


「だがソルの言うように、清廉な人物がいる。彼女にテイムしてもらおう」

(いいんですか?)

 わたしは聞き返しました。



「だがソルには少し悪役をしてもらわなければならない」

(どうしてー?)

「彼女もスライム君の事情を知れば、テイムしたがらないから。

 だからちょっとだけいたずらトリックをしかけるんだよ」

(とりっくー?)


「彼女は自分を慕う魔獣に弱い。

 自分のだけでなく、従魔舎で他人の従魔たちとも戯れている話を聞く。

 だからそこを突くんだ」

(どうすればいいのー?)



 リカさまの話はこうだった。



 まずソルが小さなひよこになって、せいれんに近づく。

 それからせいれんの隙を付いて、わたしが魔法で光る。

 誤ってテイムしたように思わせるためだ。

 それからソルが本当のテイムさせるように名づけをさせて、テイム完了。



「エリー君は頭がいいけど、こういうトリックには弱いんだよ。

 だからソルがうまくやれば大丈夫だよ」

(わかったー。ソルがんばるー。でもねー)

「なんだい?」

(ソル、せいれんにきらわれちゃうのー?)

「大丈夫だよ。エリー君は優しいからきっとソルのこと、許してくれるよ。

 もし許さなかったら、私がとりなしてあげる」

(リカがそういうなら、あんしんー。やるー!)



 そうしてリカさまの計画は見事に成功しました。

 わたしはせいれんことエリーさまにモリーと言う名前をいただき従魔になれたのでした。



 初め、エリーさまはわたしのテイムに戸惑っておいででした。

 エリーさまの従魔たちもわたしを受け入れてくれませんでした。


 どうやら、あの赤いヒトはエリーさまの怖いヒトだったようなのです。



 ですがリカさまのとりなしで、エリーさまはわたしを家族として受け入れてくださいました。


 リカさまはわたしになにも求めませんでした。

 ただこのトリックのことを黙っておくことだけが条件で、他の従魔の方々にも知られないよう魔法契約を結ばされました。



 エリーさまが受け入れてくださったおかげで、先輩従魔であるドラゴさま、モカさま、ミランダさまもとてもかわいがってくださいます。


 エリーさまは緑や青で白いヒトではないけれど、本当に愛情深いお方です。

 他の従魔の方々と同様にわたしに愛情をくれるのです。



 わたしは幸せです。

 あの時、頑張ってあの赤いヒトから逃げてよかった。

 これからは我が身のすべてをかけてエリーさまにお仕えいたします。



 だからいたずらトリックのことはどうかお許しくださいね。



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 トリックには騙すと言う意味もありますが、この場合はいたずらってことで

(`pq´)ゥシシ


 モリーは実はすごく賢いのです。しかも魔獣に稀な聖属性。

 だから聖属性に惹かれて教会へ行き、ソルちゃんと友達になりました。

 

 ソルちゃんは腹黒くないのです。むしろ純粋。

 友達のために頑張っただけなのです。


 上記警告は一応本編のネタバレ内容なので、これだけ読むと全然つまらないので付けました。

 ネタバレ内容ですが、これは本編に加えてもいいかと思った内容なので開示しました。


 3/23、200万PV突破しました。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




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