読書記録 Myノート

青澄

華竜の宮

 紹介するのは上田早夕里という方の作品です。

 大まかな内容は、大規模海面上昇によって陸地の大半が海に没した世界が舞台となった海洋SFです。

 人類は僅かに残った陸地や海上都市で暮らす陸上民と、魚舟という生物船を操る海上民に分かれそれぞれが独自の文化を形成して生きています。

 主人公は日本政府に属する外交官青澄セイジであり、物語は彼の相棒である人工知性体マキによって語られます。

 序盤で紹介されるプレートテクトニクス理論を基盤とした海面上昇のプロセスは難しくてついていけなかったのですが、本編では濃厚な設定や物語の雰囲気、世界観を存分に楽しめるようになっています。

 私は本作を読んで上田早夕里さんのファンになりました。

 個人的に世界観がドツボにはまっており、分量のある長編小説に関わらずすらすらと読み進めることができました。

 アシスタント知性体の目線で語られる陸上民の生きる高度情報社会と、どこか懐かしく神秘的な雰囲気の漂う海上民の文化の対比、双方の価値観の違いからなる対立など、架空の世界の出来事にも関わらず現代の社会問題を想起させるような描写が多々あります。

 物語の中盤では、一度滅亡の危機に瀕した人類に、再度地殻変動による大混乱がもたらされることが判明します。

 新たな危機を人類はどう受け止め、立ち向かっていくのか……。

 外交官青澄の視点で血みどろの闘いが繰り広げられていきます。


 この作品は「オーシャンクロニクル」という名称でシリーズ化されており(初刊行は『華竜の宮』ではないようです)現在も短編小説が執筆され続けています。

 

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