便利な変化球スライダー
今日の個人練習は変化球の軌道を確認だ!
全体練習が終わると伊織は早速穴開きネットをブルペンに持っていく。
ウキウキしながら倉庫からボールを運んでいき準備が整う。
そして昨日と同じように、穴開きネットに向かってストレートを投げ込む。
今はまだ球速は求めない。
しっかりしたフォームでマウンドでの体重移動を意識して投げ込む。
ストレートを40球ほど投げて、肩が十分温まったのを確認した俺は投げる変化球について少し考える。
「前の世界」でのオレの持ち球は、ストレート、縦スライダー、横スライダー、SFF、カットボール、チェンジアップだ。
しかし今の状態ではそこまでの変化球は望めないだろう。
仮に投げられたとしても、曲がり幅も落差もわからない変化球に命はかけられない。
投げられるのと実践で使うのは全然違う問題だ……。
まだ身体がピッチングに慣れていない事も考えると、身体に負担が少ない変化球から試してみよう。
とりあえずは横のスライダーからかな。
一般的にスライダーはカーブやシュートと違って、捻ったり抜くようにリリースする必要がない。
基本的にストレートに近いボールの握りと腕の振りで投げられるので、変化球の中でも習得が簡単なものとされている。
そして現代野球でのスライダーを使わない投手は少ない。
スライダーはストレートと同じような球速で変化するため、打者はストレートと誤認しやすく見極めがしにくいボールだ。
そういった点からまず覚えるべきはスライダーがいいだろう。
ちなみに俺は横のスライダーはリリースのときにボールを切る感覚、カットボールは中指に力を入れて振り抜くだけの違いしか無い。
カットボールはストレートと同じ軌道・ほぼ同じ球速から僅かに変化するので、バットの芯を外して打たせて取る事ができる。
曲がりの少ないスライダーのような認識をしてもらってもいいだろう。
そういう理由から、「前の世界」では、空振りを取るのは横スライダー。内野ゴロを打たすのはカットボールと使い分けていた。
とりあえず投げるボールは決まったし、まずはそこまで考えずに投げてみよう。
握りもフォームも同じ指導を受けても、投げたボールの変化は本当に千差万別だ。
実際に投げたボールから問題点を見つけていこう。
ゆっくりしたフォームから「前の世界」と同じ感覚で横のスライダーを投げる。
スッ……。っとボールは曲がって穴開きネットに吸い込まれる。
5球ほど繰り返して投げるが、だいたい同じ変化をする。
んーー。
球速が遅い分少し変化するのが早いかな。
あまりに変化するのが早いと、バッターに簡単に見極められちゃうからな……。
曲がり幅は必要ないから、「前の世界」のカットボール気味に投げれば変化するポイントが少し先になるはず。
曲がり始めるポイントを少し先にするイメージで試してみよう。
また5球ほどスライダーを投げる。
先ほどよりもバッターの近くで変化する。
だが今度は変化量が少し足りないだろう。
これだと決め球と言うよりは、芯を外して内野ゴロに打ち取る球だ。
少しイメージとは違ったがこれはこれでものすごく需要がある球だから覚えておこう。
こういうの新たな発見も試行錯誤をしていく醍醐味だ。
しばらくは自分に合う変化球を見つけていこう!
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