練習
ところでプロ野球選手の練習についてご存知だろうか。
普段華やかな環境で試合をしているプロ野球選手。
一般人より運動能力が突出している彼らだからといって、これといって奇抜な練習をしているわけではない。
アップ
キャッチボール
トスバッティング
守備練習
打撃練習
ダウン
個人練習
どこのプロ野球の球団でも多少の順番の前後はあるが、概ねこの流れで練習が行われる。
投手は打撃練習の時間が、投球練習になるのが一般的だ。
この練習メニューを基本にして走塁練習やシートバッティングなどの実践的練習が日によって変更される。
ちなみに伊織の在籍していた球団の『ファルコンズ』は5人のグループが作られ、日によって基本メニューにプラスして、特守であったり特打やバント練習などのローテーションが組まれていた。
野球をあまり知らない人になんとなくイメージで練習メニューを作成してもらっても、大体同じメニューになるのではないだろうか?
つまり野球の練習内容というのはレベルの差はあれど、小学生でも中学生でも高校生でも大学生でも、そしてプロ野球でも変わらないのだ。
やっていることは同じなのに残酷なくらい差が出るのは才能の違いと言ってもいい。
だからこそ一部の天才以外は、その差を埋めるために個人練習をするのだ。
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さあついにこの世界で初練習だ!
今知っている限りの情報だと、駿河南は甲子園を目指している高校。
これだけである。
……あれ?
冷静に考えると、自分のトレーニングに夢中で野球部の情報は殆どないな。
まあしょうがないか。なるようになるだろ。
校内にある男子更衣室からグラウンドまでは5分ほどかかる。
野球部の部室はグラウンドに面して立てられているので、部室を出たらすぐにグラウンドに着いて便利なのだが……。
俺はもしかすると3年間部室もらえないのかな? 練習後の談笑とかも好きなんだけど、流石にこの世界だと無理かな。
そんな事を考えながら俺は更衣室を出てグラウンドに向かう。
一塁ベンチ前にはすでに部員が集まっている。
何度見ても野球の練習着姿の女子だけが集まっている一塁ベンチ前は異常だ。
周りを見渡すとどうやら一年生は荷物をバックネット裏に置いているようだ。
それを見た俺はバックネット裏に荷物を置きに置く。
そして一塁前のベンチに向かうと、プロのマウンドとは別次元の緊張感が襲う。
新しい環境に向かう故の緊張感だろう。
ベンチ前に辿り着いて所在なさげに立っていると、一人の部員が俺に声をかけてきた。
「こんにちは。伊織君。私の名前は小日向唯奈(こひなたゆいな)。2年生だよ。うちの高校は基本的に上級生が下級生とペアを組むの。2人でペアを組んでやる練習は私とペアを組むことになるよ。後はウチの野球部は基本的に名前で呼ぶことになっているの。私のことは唯奈さんって呼んでくれればいいから。これからよろしくね」
駿河南では上級生が下級生の面倒を見てくれるバディ制度が導入されている。
簡単に言えば先輩が新人とコンビを組んで、必要な知識や疑問があればすぐにアドバイスを貰えるような制度だ。
もちろん前の世界でも取り入れられていたから知っていた。
しかしこの世界では『2人組作ってー』と言われた時、敬遠されることがあるかもしれないと思っていたからこの制度はありがたい。
ちなみに駿河南では先輩のことを、『〇〇先輩』と呼ばずに『〇〇さん』と下の名前で呼ぶのが通例になっている。これは「前の世界」でもそうだった。
唯奈さん。唯奈さん。ハキハキ元気な唯奈さん……。
よし覚えた。
「それでは唯奈さんと呼ばせてもらいます。神山伊織です。いろいろご迷惑をおかけするとは思いますがよろしくお願いします。」
俺は唯奈さんに向かって頭を下げる。
やはり最初は肝心だ。
これからの野球部生活の分岐点になるかもしれない。
「うん、こちらこそ。あ、練習メニューはベンチ前のホワイトボードに書いてあるから毎日確認してね。それから何かわからないことがあれば私に聞いてね」
「了解です」
「じゃあ最初はアップからだから行こうか」
「はい」
唯奈さんはそう言うとみんなが集まっているところに向かったので俺もついて行った。
よっしゃ、やるぞ!!
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