自主トレ
海岸に向かう途中で100円ショップに寄ったのが休憩代わりになって、まだそれほど疲れていないな。
今日は身体のチェックをすることが課題だ。
最初は適度に身体も温まったし、ストレッチから始めよう。
よくストレッチで勘違いするのは、二人一組でチームを組んで無理やり押し込むようなやり方だ。
これはストレッチを無理やり体に負荷をかけて、柔軟性を得ようとしているからだ。
何故かこのやり方は一般にも周知されていて、正しいやり方と信じている人もいるかも知れない。
しかしそんなやり方をしても、得られるのは苦痛のみで効果も出ない。
そうなると結局練習前の流れ作業的にストレッチをやっている選手も多くなる。
目的を持ってやらなければ結果も出ないし、継続しなければ身体も変わっていかない。
負荷がかかっている部分を入念に確認しながらストレッチを始める。
トレーナーに教えてもらったプロ直伝のストレッチを行うと思っていたよりも柔らかい体に少し驚いた。
プロ野球選手はシーズン通して試合に出ることは肉体的にかなり負担がかかる。
そのため自分の商売道具である身体のコンディションを整えることはプロとして当然だ。
むしろ体のケアを怠っているとすればプロ失格と言われてもおかしくない。
だからこそ体幹を鍛えることと、体の柔軟性をもたせることは、故障や怪我の予防につながるからみんな真剣に行っている。
しかし自分の身体のことをわかっているからこそ違和感がある。
おっかしいなぁ。
この時期の俺の身体はここまで柔らかくなかったはずだ……。
プロになってからフィジカルトレーナーにストレッチを教えてもらってから体も柔らかくなってきたけど、もしかすると今のほうが柔らかいかもしれない。
少し身体の可動域は増えているようだ。
それほど強引にではなく伸ばされた部位を確認して、呼吸を意識しながらストレッチを終えた。
よし。ストレッチは終わりだ。
この後はダッシュをするか。
確認しておきたい持久力に関しては期待できそうにないから後回しにしよう。
とにかく今は反射速度と俊敏性を見ておきたいからな。
10メートルのダッシュを10本
これを前後左右4セット行う。
短いかもしれないと思われるが野球の競技の特性上、それほど長いダッシュは必要ない。
むしろ最初の5歩だけでもいいくらいだが、今回は体力づくりも兼ねているのできっちりと最後まで走り抜ける。
実際にダッシュしている距離は400メートルでしか無いが、真剣にダッシュを繰り返すと汗が噴き出してくる。
誰かにやらされてるトレーニングなんて意味がない。
やると決めたならなら何でも真剣にやるのが伊織の美点だ。
んー。
反応的には違和感がないように思えるけど、もしかすると筋力の部分で反応が遅れてるかもしれない。
拇指球意識。拇指球意識。
拇指球(ぼしきゅう)とは足の親指の付け根のところにある丸く膨らんだ部分だ。
野球では瞬間的に力を入れることが多く、バッティングでも守備でも反応が大事になる。
その際に身体の重心が前のめりになっていたり、踵(かかと)が地面にベッタリと付いていると、瞬間的に動くのが難しくなってくる。
なので止まっている状態から素早く動くには、リラックスして立ち、すこし踵を浮かせて最後に拇指球に力を入れて蹴り出すと鋭く動ける。
その後もトレーニングを続ける。
全力ジャンプ10回
スクワット30回
腿上げ30回
腕立て10回
腹筋10回
背筋20回
回数は少なめにして身体に動きを覚えさせるのを念頭に、「前の世界」の練習と比べるとかなり軽めのメニューにしていたつもりだったが、思った以上に体力がなかった。
やばい。やばすぎる。
ちょっとシャレになんないくらいキツイぞ。
でもその代わりにある程度体の状態は把握できたのが救いか……。
最後にシャドーピッチングをして終わろう。
シャドーピッチングとは簡単に言えばボールを投げずに投球動作をすることだ。
主にプッチングフォームづくりに用いられる方法だ。
やり方は簡単。
タオルの先端部分を結んで球状を作り、その部分を人差し指と中指で挟んで投げる。
それだけである。
先程100円ショップ買ってきたスマホ用の三脚に高校の入学祝いで買ってもらったスマホをセットする。
そして10分ほど動画モードのまま自分のピッチングフォームを撮影する。
自分のピッチングやバッティングのフォームを確認するのは、最初は恥ずかしいかもしれないが絶対にやるべきだ。
間違ったフォームや、変なフォームを身体に覚えさせるのは成長の妨げになるし、何より『カッコよくない』だろ。
洗練されたフォームで腕をふるたびに、
ビュッ!
ビュッ!
っと風を切る音が出る。
身体の動きを意識しながら、気持ちゆっくりシャドーをする。
そして50回ほど同じ動作を繰り返して後、流れた汗を拭き取りながら一息つく。
よし。フォームの動画も撮影できたし今日はこのくらいにしとくか。
でもやっぱり体幹が心もとないのかな。正直腕も足もプルプルしてるし……。
さっそく家に帰ってフォームチェックをしよう!
明日のメニューも考えないとな。
そんなことを考えながら行きと同じようにハンドグリップをニギニギしながら帰路についた。
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