第19話
「帰ろう」
大智に手を引かれ、私は階段を下っていた。背後からはおさまることのない男子達のばか騒ぎをする声が聞こえていた。
私と大智は校門を出るまで口を利かなかった。手が繋がっている。私にとってはそれだけで良かった。
けど、校門を出てすぐに大智が話し始めた。
「ごめん。俺が横入りしたからややこしくなっちゃって。でもさ、我慢できなくって!」
必死に訴える大智を私を助けてくれる大智を私なんかが怒れるはずもなく、ただ大智をみて微笑みお礼を言うことしかできなかった。
「ありがとう」
「俺が欲しいのはお礼なんかじゃないよ」
ニヤついた大智が少し奇妙だったが、すごく可愛かった。
私が無言で歩き出すと「ねぇ、早く言ってよ」と絡んできて本当にしつこかった。
「私もずっと好きだった」
結局、私の根気敗けで言うことになってしまった。
(あー、恥ずかしい)
けど、大智がこんな些細な言葉で笑ってくれるのならたまには言いかな。なんて思ったりもした…。
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