第96話 今の気持ち


「俺は良いっすよ」

大村くんが口を開いた。

「大村・・・」

松島くんは嬉しそうに大村くんを見ている。

上山くんは相変わらず土下座をしたままだ。


「自分も」

鈴木くんが控えめに言った。


「俺達も上山さんにはもう詫び入れられてるんで。なぁ?」

「う、うん」

岩田くんの言葉に他の一年生たちも同調した。


「俺達はなぁ。許すも何もないし・・・」

「あぁ」

浅野くんの言葉に他の二年生部員たちも同調した。


「みんな・・・ありがとう」

松島くんが嬉しそうに言った。

上山くんはまだ頭を下げている。


高坂くんは上山くんをじっと見ている。

「高坂くんは?」

僕の問いかけに高坂くんは

「俺は出戻りだから、どうこう言える立場じゃねぇよ。

 みんなが良いなら良いさ。

 こいつのことは嫌いだったけど、今のこいつの気持ちは良くわかるつもりだし」

「高坂くん」

一度、野球を離れた高坂くんだからこそ、上山くんの今の気持ちを

きっと一番、理解してくれているんだと思う。


「上山さん」

最後に池崎くんが口を開いた。

珍しく真剣な表情で上山くんを見ている。

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