第75話 頑張らなきゃ


「頑張ってください!」

町村さんは僕にグローブを差し出した。

僕はグローブを受け取った。

町村さんはニッコリ微笑んで

「大丈夫ですよ。あんなに一生懸命練習してきたんですから」

「そうだよ。児玉!」

「頼むぞ!児玉!」

「俺がフォローしてやるから大丈夫だって」

「気合い入れて行きましょう!児玉さん!」

浅野くんが、高橋くんが、千葉くんが、鈴木くんが、みんなが僕に声を掛けてくれる。


そうだ、こんな弱気じゃダメだ。

もう僕しかいないんだ。

僕がやるしかないんだ。


「児玉さん!頼みます!」

池崎くんが言った。

「うん!」

僕はとうとう覚悟を決めた。


「よし!池崎の分まで、みんな、気合入れていくぞ!」

「おうっ!」

松島くんの掛け声でみんながグラウンドへ散って行った。

僕も慌ててライトのポジションへ向かった。


「おっ!出てきたぞ!」

「あいつか、例のへたくそって」

「そうそう、帰らなくて良かっただろ?」

「いよっ!待ってました!」

「期待してるぞ!へたくそ!」

「ぎゃはははは」

金子くんたちのヤジが聞こえる。

でも、そんなヤジに負けている場合じゃないんだ。

池崎くんの分まで、僕が頑張らなきゃ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る