第7話 辞めねぇの?

「なんだよ。お前、辞めねぇの?」

翌日、グラウンドに現れたアイツに上山が言った。

上山の横で、金子がニヤニヤ笑っている。


「お前いい加減にしろよ!」

高坂が上山に食ってかかった。

「あぁん。てめぇこそ、いちいちしゃしゃり出てくんじゃねぇぞ!」

高坂と上山は睨み合い、お互いに今にも殴り掛かりそうな勢いだ。

「待ってよ。止めてよ」

アイツの言葉は二人には全く届いていないようだ。


オレは何も言わなかった。

いや、もしかしたら言えなかったのかもしれない。

本心では上山と同じように考えていたからなのかもしれない。


「おい1年!さっさとグラウンド整備始めろよ!」

「チッ!」

先輩方が現れ、高坂と上山は睨み合いながらも、渋々グラウンド整備を始めた。


アイツはやはりへたくそだった。

守備に付けば

ゴロはトンネル、バウンドにはタイミングが合わない

フライも前に行き過ぎたり、後ろに行き過ぎたり、全く距離感が掴めていない

送球もフォームがひどいし、制球もバラバラ

まともな守備をすることなど、10回に1回くらいだ。


バッティングも同じ

空振り、空振り、また空振り

たまに当たってもどん詰まり

タイミングも取れていないし、フォームもバラバラ


正直、上山だけでなく、監督や先輩方

そしてオレも、呆れてしまう程、へたくそだった。

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