第16話 図書室にて
―――カタカタカタカタ
静かな図書室にパソコンのタイピング音だけが響いている。
俺はそれを横目に本を読んでいた。
―――カタカタ タッターン
さっきまでの単調なタイピング音から一変して、
エンターキーを叩く音が鳴り響いた。
「……よし。」
どうやら
作業を終えた
「…先輩、終わりましたよ。」
「お、そうか…お疲れ様。」
と、俺は彼女の報告に本を読みながら、生返事をした。
すると、彼女は俺の本を取り上げて言った。
「『お疲れ様』…じゃないですよ!何で私が一人で作業してるんですかー。」
「え…だって桜ちゃんが俺の作業スピードが遅い、
って言って俺の作業を横取りしたんだよ!それに…」
彼女は俺の言葉を遮って話し始めた。
「だ・と・し・て・も、女の子一人に仕事を押し付けるなんて将来、会社に勤めたときにダメな上司って言われますよ。せめて何か手伝うとか、手伝わなくても労いの言葉の一つぐらいは言ってもいいと思いますが…。」
俺は彼女の話が一区切り着いたところで、
「じゃあ…………
ありがとう。いつも俺が仕事のペースが遅いから代わりにやってくれて、
いつも助かっているよ……これでいい?いいなら本を返して。」
いい加減に本を返して欲しいので彼女の言う通りに労いの言葉を言った。
すると彼女は急に顔を赤らめ、無言で本を返した。
「あ、ありがとう。」
俺は一言、礼を言ってまた本を読み始めた。
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