第1話 10年後のぼく。⑤
ぼくだけを見据えて向かってきた人造人間は、10年前に見た光景と同じように剣を振りかざしてきたーーー
「なんなんだよ!なんで力の能力を授かっただけで命を狙われなきゃいけないんだ!こんな使えない力選ぶんじゃなかった!」
ぼくの目の前で1人の男性が人造人間に襲われている。
しかし能力をまだ授かっていないぼくは、その光景をただ見ていることしかできなかった。
人造人間は無抵抗の男性に近づき、右手に持った剣を無機質に振り下ろした。
「誰か助けてくれ!」
男性の叫びと重なり、雷音が辺りに響きわたった。
雷音と共に現れた人がいた。
気付くと人造人間はその人の足元で粉々になっていた。
目の前の光景は衝撃的で、幼いぼくには本に出てくる…英雄に見えた。
「間に合った」
その人の笑顔は、恐怖で埋め尽くされていたぼくの心を優しく包み込んだ。
「…助かり…ました…」
「怪我はなさそうだね」
「さっきの…雷は…」
「わたしの力の能力のことかな」
「知恵にも…力にも…そんな能力ないですよ」
「君の能力はまだ成長途中だ。見方を変えると見えてくるものも変わる。なにも知らないことをまずは知ることだ」
ーーー剣先はぼくの顔の前で止まった。
「大丈夫、怪我はなーー」
徐々に薄れゆく意識の中で女性の声を確かに聞いた。
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