14 よく見るものの話

 ひどい寝汗であなたは目覚めた。枕に乗せた後頭部がじっとりと濡れている感覚がする。いや、首も背中も、とにかく汗ばんで気持ちが悪い。


 ――気持ち悪い。夢のなかのあなたもその言葉を聞いた。暗い夜道。田んぼのそばだった。重い湿気がまとわりつく日だった。あたりには明かりがなくて。あなたは息をきらして駆けていた。早く、早く、と。ただそれだけを考えて、必死に。


 あなたはベッドから上半身を起こした。消灯後の部屋に、非常灯の緑色だけが薄ぼんやりとわだかまっていた。あなたは頭をかく。かきむしる。ぼりぼりと、荒々しく。どんな悪夢だったか、すでに忘れはじめていたけれど、あの鳥肌がたつほどの不快感はいまだあなたのもとを去らず、悪魔となってあなたのそばで意地悪く笑っていた。


 どうしてこんな夢を? あなたは自問する。答えになりえる事象は「先生」と交わした会話、それしかなかった。だって、あなたの毎日には起伏も変化もあの面会以外にないのだから。

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