第59話 ノイズ

 スマホに表示されていたいいねの合計は340。その半分以上が例の執事の写真に対するもの。


 ──みんな、ムキムキケモミミ執事、好きすぎだろ


 と私は思わず内心ツッコミを入れる。

 キミマロを召喚した後の、この短時間でそれだけいいねが追加でついていたのだから。

 人造巨人の動画にも、現在進行形で順調にいいねがついているが、こちらはまだまだ時間がかかる様子。


 ──これで回せるのはレア確定ガチャが三回。


 私はそこでちらりと焔の民の少女の作り出した炎の壁を見る。

 巨人の樹の根の槍の攻撃は完璧に防いでいる。

 驚異的な安定感。

 その際に見えた焔の民の少女の顔。分かりにくい顔だが、それでもはっきりとつまらなそうにしている様子に少しきもが冷える。


 ──あれ、暴走しないといいんだけど……。暴走して反撃を始めたら止める自信がないよ。


 私は急ぎスマホに意識を戻すと、レア確定ガチャを三回、回した。


 流石に見慣れてきたガチャマシーンの画面。

 飛び出すガチャカプセル。


 ガチャの開く画面で、突然、ノイズがスマホ画面に走る。


 画面が暗転。


「え、うそっ。フリーズっ?! ちょ、待って待って待って!」


 突然の出来事に狼狽える私。

 思わずスマホ画面を何度もタッチする。


 突然、再び画面が明るくなる。


「あっ、着いた! え、ガチャの結果はどうなった? データ飛ぶとかやめてくれよっ」


 スマホの表示はは、リザルト画面に変わる。しかし、これまで見たことのない画面がうつっていた。


 レア度 なし

 属性  コマンド

 名称  融合

 『未開封のガチャカプセルを二つ融合するプログラムを実行する。いいえを選択する際、このコマンドは消滅する。1/1』

 →『はい』

 『いいえ』


「なんだこれ……」私は思わず画面を二度見する。


(選択肢がある……。言葉通りなら、このコマンド? 自体がガチャで出てきたってことだよね。レア度がなしになっているのも謎だけど、融合するとどうなるかわからないのが一番困る)


 私が悩む間も続く焔の民の少女と樹の根の槍の攻防。

 焔の民の少女があくびをしている。こきっと右肩をあげて鳴らす焔の民の少女。それだけで右手前方の海面が水蒸気爆発を起こす。


(なんかめっちゃ急かされている気がする……。え、ええと、そうそう。コマンドだけど、いいえを選べば、普通にレア確定ガチャが二つ出るって事だよね。問題なのは、そのリザルトが出てない事だ。融合するかどうかも、リザルトが出てから選ばせてくれれば良いのに……)


 私はそこまで考えて、どちらを選ぶか決めると、スマホ画面に指を伸ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る