第16話 進化
スマホをタッチした瞬間、手にしたチケットが、ぼふんと煙に変わる。
「うわっ! びっくりしたー。手に持っているって言うのに、心臓に悪いわ。嫌がらせかっ」
思わず驚く私。
気を取り直し、ユニット編成でディガーをみてみる。
『ディガー
種族 ノーム
スキル 土魔法 錬金術』
「おお! 変わってる変わってる。ちゃんとノームになってる。やっぱりあの三択ならノームだよね。ホブゴブリンはイメージ的に大きくなって何となく怖くなりそうだし。ゴブリンファイターは派生系統っぽいから、それで進化の袋小路って感じがしたんだよね。その点、ノームは力はそれほどでも無さそうだけど精霊だから、特殊な特典とかあるかと期待してたんだ」
ほっと胸を撫で下ろす私。
「その点、ちゃんとスキルがあるねー。土魔法に錬金術か。ノームだから土魔法って言うのは確かに納得。錬金術は完全に想定外だったなー。でももし使えるスキルなら嬉しい驚きって感じだね。早速ディガーを呼び出してみますかっ」
私はスマホからディガーを召喚する。
現れたのは、ゴブリンだったときよりも一回り小さくなったディガーだった。顔立ちとかはゴブリンとあまり違わないが、頭に被った帽子がノームっぽい雰囲気を醸し出している。
ディガーも召喚されてすぐは手足を振ったり、体を確認したりと落ち着かない様子。
どうやらスマホのなかに収納されている間に進化するのは、本人たちにとっても突然の出来事のようだ。
しばらく自由にさせてあげる。
ようやく縮んだ体躯の扱いに納得したのか、サムズアップしてくるディガー。その動きや表情は前のまま。
「ディガー、何か室内で使えそうな土魔法ある?」
私はディガーにお願いしてみた。
腕を組み、首を左に右にと交互に傾けるディガー。何だかリズミカルに頭が左右に振られる。
突然ぽんと手を叩くと、急にスコップを掲げて円を描くように歩き出すディガー。
その手のスコップを上下にふりながら。
一心不乱にスコップをふりながら円の形に歩き続けるディガー。数回、回ると、なんとディガーの歩いたライン沿いに魔法陣が生まれてくる。
ディガーの表情はまるでトランス状態にあるかのように恍惚としている。
歩き続けるディガー。
魔法陣がディガーの歩みと振り上げられるスコップの動きに合わせて光り出す。
光のなか、魔法陣の中央では何かがゆっくりと床から登り上がるかのようにぽこぽこ出てくる。
何か粉状の光るものが、魔法陣から出てきているようだ。
しばらく無心で回り続けるディガー。
そのトランスした表情がついに苦しみに変わり始めると、バタンとディガーが急に倒れる。
思わず駆け寄る私。急いで下級ポーションを取り出す。
うつ伏せに倒れてしまったディガーを仰向けにする。ディガーの口に下級ポーションを注ぎ込む。
意識を取り戻し、ゆっくりとサムズアップしてくるディガー。
思わずディガーの手をそっと抑えると、スマホにディガーを収納する。
「まさかの大がかりな魔法だ。ディガー、ゆっくり休んで。そういえば出てきたのは何だ?」
私は急いで魔法陣の中央に駆け寄る。
そこにあったのは、黄金色に輝く砂粒。そう、まさかの砂金。それがちっちゃなちっちゃな小山になっていた。
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