第2話 初ガチャ

 私はスマホ画面のアプリで、ガチャっぽいカプセルのアイコンをタッチする。


「多分、こっちがガチャだよな。おっ、起動した」


 アプリが起動し、文字が飛び出すエフェクトとともに、画面に表示される。


「何々、初回限定ボーナス、10連ガチャ! おお! 定番のサービス来た!」


 10連ガチャの輝く文字が消えると、ボタンが3つ表示される。

 それぞれ、10回まわす、1回まわす、やめる、の文字。


 私は迷わず10回まわすをタッチする。


「当然、10連ガチャをするしかないっしょ。何が出るかなっ」


 思わず歌いたくなるのをギリギリの所で自制する。サイコロじゃないしね。

 そんな葛藤に直面している間に、スマホの画面ではガチャのカプセルが次々に現れては開いていく画像が早送りで流れている。


 パカパカパカパカパカパカパカパカパカパカパーン。


 律儀に10回繰り返し流れるエフェクト。


(いま、途中で二回、色違いのカプセル出てたよね!)


 そして、スマホはついにリザルト画面になる。

 一つめの結果が表示される。


 レア度 コモン

 属性  アイテム

 名称  スコップ


 そこには長柄のスコップの絵が表示されていた。


「あー。初ガチャはスコップか。これはまあ記念って感じかな。次は……」


 画面をタッチし次のリザルト画面に進む。


 レア度 コモン

 属性  アイテム

 名称  スコップ


「うわっ、まさかのスコップかぶりかよ! ついてないな……。次!」


 レア度 コモン

 属性  ユニット

 名称  ゴブリン


「おお! なんかファンタジーっぽいの来たよ! ゴブリンか。ユニットってことは、召喚したりするのかな」


 次のリザルト画面に進む。


 レア度 アンコモン

 属性  アイテム

 名称  湧水の桶


「アンコモンだ! でも、なんだこれ? オケ? 後で要確認だなー。」


 レア度 コモン

 属性  ユニット

 名称  ゴブリン


「あら、ゴブリンもかぶったよ。スコップといい、被りすぎじゃ……。もしかして、レベル1だと種類少なめ?」


 レア度 レア

 属性  スキル

 名称  着火


「スキル来た! しかも、初のレア!」


 レア度 コモン

 属性  ユニット

 名称  ゴブリン


「うわ。ゴブリン3体目! ユニット出やすいのかな」


 レア度 コモン

 属性  アイテム

 名称  ナイフ


「あー。これは役にたちそうかも?」


 レア度 コモン

 属性  アイテム

 名称  マント


「うーん、普通?」


 レア度 コモン

 属性  アイテム

 名称  下級ポーション


「おお、ファンタジーっぽいの再び!」


 そこでリザルト画面が終了する。

 新たに、スマホの画面にリザルト一覧の文字が。


 タッチすると、先ほどのガチャの結果が一覧で表示される。


 ●レア

 着火


 ●アンコモン

 湧水の桶


 ●コモン

 ゴブリン ×3

 スコップ ×2

 ナイフ

 マント

 ポーション


「ここでさっきのガチャの結果が見られるのか。どれどれ。並びはレアリティ順かな。出てきた属性はアイテムと、ユニットと、スキルがあったなー。ナイフもアイテムだったから、属性に、武器とか防具枠はなさそうだね。他に属性あるかは、今後のガチャやってみてかね。さて、どうやって使うんだろ」


 私は試しに一覧の中のスコップの文字をタッチしてみる。


『アイテム スコップ 使用しますか? はい・いいえ』


 すると、スマホの画面に使用するか尋ねる表示が現れる。


「なるほど、この画面から使えるのね。はいをポチっと」


 私がはいをタッチした瞬間、目の前の何もない空間から、ポンっと音をたててスコップが現れる。

 現れたスコップはそのまま落下、草むした地面の上に落ちる。


「おお! でたでた!」


 私はスコップを拾いながら呟く。

 そしてそのまま片手で軽く振り回してみる。


「うん、普通のスコップだ。程よい重量。持ち手は木製で、掘る部分は金属製か。これぐらいなら片手でも使えなくはないな」


 私はそのまま地面に突き刺してみる。


 ザスッという音をたて、先端部分が地面に埋まる。

 そのまま立てておいて、スマホの操作に戻る。


「次はどうしようかな。やっぱりスキルかな。何だか魔法っぽい雰囲気がするしね。まさかの火起こしが上手くなるスキルってオチはないと信じたい」


 私はスマホの画面の着火をタッチする。


『スキル 着火 習得しますか? はい・いいえ』


 私は迷わずはいをタッチする。


 特に何も起きない。

 私は慌ててリザルト一覧を見ると、着火の表示が消えている。


 一度ガチャの画面を閉じ、ステータスのアプリを開く。


 ◇ステータス◇


 《ネーム》 なし

 《アプリ》 ステータス ガチャlv1 投稿lv1

 《スキル》 着火

 《加護》  投稿神の祝福



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ちゃんとスキル欄が増えて、着火がある! さて、どうやって使うのか。」


 私がどうしたものかと考え始めると、何となく使い方が頭に浮かんでくる。


「凄い、使い方もわかるのか。さすがスキル」


 私はさっそく頭に浮かんだ使い方を試してみる。

 手のひらを上に向け、キーワードを唱える。


「『火よ』」


 すると、僅かな疲労感と引き換えに、手のひらに、ろうそくぐらいの大きさの火が現れた。


「!」


 無言でそれを見つめる私。じわじわと沸き起こる、なんとも言えない高揚感。

 私はそれを十分に堪能すると、火を消そうと念じながら手のひらを握りこむ。

 消えるろうそく大の火。


「できたね。できた。いやこれは感動だわ。まさにファンタジー! でもこれ、だし続けている間は疲労感があるのか。スタミナとか体力とかがスキルの代償なのかな? スキルを使うと、そういう風になるゲームも確かにあるけど。こんなところをスタミナ制にしなくても……」


 感動に浸りつつも、分析もしておく。


「さて、次はこれかな」


 私は次の物をスマホの画面でタッチする。


 目の前に、木製の桶が現れた。

 大きさはお風呂場にあるような小さめの桶。

 ゆっくり持ち上げてみる。


「一見普通の桶だけど。あれ、湿ってきた?」


 桶の底から、ゆっくりと水が滲み出てくる。


「おお! 水だ! 言葉通り、本当に水が沸いてるよ! 近くに水場が見当たらないから、これは助かる。ただ、ゆっくりだな……」


 見ていてじれったくなるぐらいの速度でゆっくりゆっくり染みだし続ける水。

 私は一度放置しておくことにする。


「さて、次はいよいよ、こいつか」


 私は大きく一度深呼吸をする。ごくっと唾を飲み込むと、リザルト一覧に表示されたゴブリンの文字に指を向けた。


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