「  」

鳩の唐揚げ

第1話 不思議な少年

退屈だ。

そんなことを考えながらふと、私は天井を見上げる。

いつもならただ薄汚れた天井が見えるだけなのだが、その日は違った。


そこには少年が浮かんでいた。



私の両親は仲が良くなかった。

いつも喧嘩ばかりで、火の粉は私にも飛んできた。

日に日に、私の体には傷が増えていった。

そんな日常にも、体の痛みにも慣れた頃には、私は何も感じなくなっていた。

退屈。

当時の私にはその言葉しかなかった。

でもそれは、その少年と出会って変わっていった。


『退屈そうだね、キミ。』


少年は、そういった後、こう続けた。


『そんなキミにいい話があるんだけど、聞きたい?』


いい話。

そんなことに興味はなかったけれど、その少年自体に興味を持った私は話を聞いてみることにした。


「いい話って?」


『ふーん、聞きたい?どうしようかなぁ?』


「話すなら早く話してよ、もう寝たいんだけど。」


『あ、ちょっと待ってよう。もう、せっかちなんだからなぁ、最近の子供は。』


「最近の子供って…」


君も子供じゃないか。

脳内でそんなツッコミをしながら、私は少年の話を話半分に聞いていた。

けれどその後、少年の口からは興味深い言葉が発せられた。


『僕も最近やる事が無くて暇でさ、暇つぶしに付き合ってもらおうと思って。』


「暇つぶしって?具体的に何?」


『僕はこれから君にある能力を貸してあげる。君がその力をどう使うか観察させて欲しいんだ。』


「能力って何?よくある超能力的なこと?」


『そうそう!話が早いね!』


そう言って少年はその能力の説明をした。

少年が言った能力とは、さっきも言った通り超能力に当てはまるもの。

具体的には、他人の姿形を取り上げ自分の物にする能力。


その能力に興味を持った私は、少年の提案に乗り、その能力を手に入れた。


少年は私に能力を授けたあと、その浮いた体が幽霊のように薄くなっていき消えていった。



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