第2話 ルクスの力
「ルクス、狩りにいくぞー」
父、アルスだ。
アルスはB級の冒険者である。この世界には冒険者ギルドというものがあり、様々なクエストをこなしながら冒険者は日銭を稼いでいる。
ちなみに今まで生きてきた世界にも必ずギルドがあり、冒険者という職業があった。それだけでなく、多少の違いはあるが転生した世界はどれも同じ言語であり、同じような文明を持ち、魔法に関しても同じであった。不思議だがそれは俺も助かっている。いちいち勉強しなおすのも面倒だしな。
冒険者にはS級~F級までの位があり、S級の上にもランカーと呼ばれる冒険者がいるらしい。
ちなみにA級以上は冒険者全体の1%未満で、B級でも三%程度しかいないようだ。ランカーとなれば全世界で十人もいないらしい。
アルスはB級であることをよく自慢してくるが、最近お腹がでてきた父なので、強さについてはあまり信用していない。
まぁ家族ができて、安心安全なクエストをこなして生活しているようなのでしょうがないだろう。
十二歳になり俺も冒険者となった。ギルドには十二歳から登録できるので、誕生日にギルドに連れていかれ、半ば強引に冒険者となった。
アルスは自分の子供とパーティーを組むのが夢だったらしい。それが叶うとなって、誕生日は自分以上にはしゃいでいた。
十二歳の誕生日プレゼントは現在自分が装備している子供用の上下黒の軽装備と、小さな剣であった。
軽装備は布で作られており、鉄などの金属でつくられた鎧に比べ防御力は低いが、軽く動きやすいので、敏捷性に優れる。しかも魔法の補正がかかった特注品であり、その辺の鎧よりもずっと防御力も高い。
普通は値段が高くて買うことが難しい品だがアルスは三%しかいないB級冒険者。蓄えもそれなりにあるらしい。
「お父さん、今日はどんなクエストなの?」
「ふふふ、今日はなんとC級クエストだぞ」
俺は半年でD級冒険者となっていた。FからEに上がるのに平均半年、EからDに上がるのに平均一年かかると言われているので、半年でDまで上がるのは驚異的な早さである。
もちろんB級のアルスとパーティーを組んでいるのも理由のひとつとなるが、俺には大きな秘密があった。
俺は転生する際に前世の記憶だけでなく、レベルやステータスも引き継いでいるのである。しかも今回で転生百回目。レベルは六回目あたりで九十九に達しカンストかと思ったが、次の転生で軽く百を越えたのだ。
現在の俺のステータスは、
LEVEL:728
HP:25500
MP:28800
攻撃力:8250
防御力:7880
魔力:8400
俊敏性:9540
運:80
となっていた。運のステータスだけは何故かレベルが上がっても増えることはなかった。おそらく固定なのだろう。しかし今までの人生で運が悪いとはあまり感じたことがないので悪い方ではないのだろう。
ちなみにアルスが自慢してきたステータスは、
LEVEL:72
HP:3100
MP:650
攻撃力:910
防御力:820
魔力:410
俊敏性:845
運:???
である。
自慢するだけある高スペックだ! ただ運のステータスは教えてくれなかった。これは悪いパターンだろうな。
しかし、俺のステータスはもはや普通の人類が到達できるレベルではないだろう。全ての生物においても、おそらくだが俺に敵うものはいないだろう。
実際五十回の転生を越えたあたりから老衰以外で死ぬことはなくなっていた。
ステータスは自分の数値しか見ることができない。他人のステータスを知るためには本人に教えてもらうしかない。もしくはルックという魔法を使うしかないのだが、その魔法ルックも究極魔法に分類されており、使える者など見たことがないし、文献の中でしか見たことがないので本当にあるのかも疑わしい。
ちなみに魔法のランクだが、簡単なものから下級、中級、上級とあり、その上には至高、究極、神域とある。至高でも使えれば大魔導師や賢者と呼ばれるくらいである。
俺は自分の力を隠して生きてきた。本当の力を知ると、化け物と恐れられるか、もしくはその力を利用しようと取り入ってくるか……今までの転生でよく理解している。
なので、いつしか俺は平凡に生きることを望むようになった。力を隠し、自分の周りの火の粉だけを払う。平凡に働き、平凡に暮らし、平凡に年をとる。
戦争がおき、他人がいくら死のうと、国が落とされようと、自分と自分の知り合いさえよければ良いと思うようになっていた。
そういった人生をもう何度送っているだろうか。今回は記念すべき百回目の転生となるが、特に生き方を変えるつもりはない。平凡に生き、平凡に年をとるのだ。それが一番なのだ。
ただ転生を繰り返す上で楽しみはあった。俺は才能がないのかレベルが他の冒険者に比べ極端に上がりにくかった。それでも有り余る時間を使い、いい狩り場を探しひたすら魔物を刈る。少しずつ上がるレベルに喜びを感じるようになっていったのだ。そうしているうちに、才能のない俺でもここまでのレベルになった。
半年前に遡る。
十二歳になっての初めてのクエストは猪の討伐であった。森にいる猪が食べ物を探して迷い混み、町の農作物を食い荒らすので助けてほしいというものだ。
猪が出るという森を歩いていると、アルスが頭をポンポン叩いてきた。
「ルクス、今日は初めてのクエストになるが、心配しなくても大丈夫だぞ」
「ほんとかなぁ、怖いよぉ」
怖さなど微塵もないが、子供らしさを忘れず演技するのは大変だ。十二歳ってこんな感じだっけ。
「大丈夫、大丈夫。お前の装備している服は魔物ならともかく、動物ごときの攻撃では少しもダメージを与えられないよ」
「わかった、頑張るよ」
と笑顔でかえすと、その意気だと背中をバンバン叩いてくる。
ちょ、ちょっと待って強い、強い……少しだけダメージ入っているんですけど……
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