暁の攻城戦、最弱ギルド戦記

藤村銀

序章『御伽噺~フェアリーテイル~』

プレイヤー:ロラン・ロマン


 炎が爆ぜ、雷が走り、大地が揺れ、風が吹き荒ぶ。

 刃と刃がぶつかり、肉を穿ち、生者が死者に変わる。肉まで朽ちた屍が闊歩し、生者を自らの同胞にしようと襲いかかっていた。


 頭上には無数の矢の雨が降り、足元には行く手を阻む罠の数々が仕掛けられている。

 前方にはこちらの戦力の何倍もの人数がおり、絶えず声を張り上げ、威嚇してきていた。


「いやいやいやいや、無理ですってマスター! もう撤退しましょうよ⁉」


 ロランの進言をいけるいけるって、とマスターは軽くあしらう。それを横で聞いていたアリスがケラケラと笑いながら、屍を使役し、ロランに近付いてきた。

「あっははは、馬鹿だなーロラン。ヴィトが退くワケねーだろ?」

「いや、でもコレは無理でしょ! 戦力差何倍あると思ってんのさ!」

「それこそ彼我の差があればあるほど燃えるのがアイツだろ。そこんとこ、お前が一番わかってんじゃねえの?」

「……む、そうだけど」


 大魔法を敵陣に打ち込み一仕事終えた晴彦が寄って来て、その背をロランに預けた。

「ってえと、この不利な状況をどうにか打開する策を考えるのが、サブマスターのお前の役目ってことだ、ロラン」

 不安げに、前を見ると、そこには獅子奮迅の勢いで剣を振るうマスターの姿があった。次々と敵を薙ぎ倒していくが、それでも敵はまだまだいる。このままではこちらが消耗して、敗北するのは目に見えていた。


 敵を打ち倒した後の、数瞬の間。ロランとマスターの目が合った。死が隣接する戦場だというのに、彼女はロランに向かってウィンクを飛ばした。

 それは、打開策を期待しているぜ、という無言の無茶振りだった。

「~~ッ、ああもう! やりたい放題やってぇ! わかったよ、考えればいいんでしょ!」

「とか言っちゃって、本当はヴィトに背中任されるのが嬉しくてたまらないクセに」

「そうイジッてやるなよアリス。ロランがマスターにご熱心なのは皆知ってることだろ?」

「アリスも晴彦もうるさいよっ! 今策考えるから、ちょっと黙ってて!」

「「へーい」」


 これがロランたちの初陣の攻城戦にして、初の白星となった。全ては、ここから始まった。


 これはかつてサーバー最強を誇ったギルド『Going My Way!!』が廃れていくまでの、御伽噺フェアリーテイル

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