第18話 住の江の 岸に寄る波 よるさへや

『先生、おはようございます。』

『あぁ…おはよう。』

『あれぇ、紅葉ですねぇ?先生はドライフラワーに興味があるんですか?』

『ドライフラワーは興味はないわけではないけど…このように、好きな女性を見ていたいかなぁ…』

『もう、先生ったら、ロマンチストなんですねぇ。』

『そうかもなぁ…あぁ、ところでいつもの?』

『はい、はい、ありますよぉ。ルイボスティーとソフトチキンとパクチー大量のサラダとハムとチーズのサンドイッチですよぉ。』

『あれぇ、もしかしたら…嫌がっている?』

『そりゃ、先生の頼みですので、嫌とは言えませんけど…ここに来る度に毎回はかなりきついですよぉ。』

『なら、担当おりても良いよぉ…』

『えぇ?すいません、もしかしたら、悪い事言いました?今のは冗談ですよぉ。そんなつもりで言った訳ではないですから、この通り担当をおろす件は報告しないで下さい。それに、坂浦先生の担当は私が志望したんですから…』

『違うって、もしかしたら、担当をおろすと思っている?私の担当は稲村さんだけにお願いしたいけど…朝の朝食を持ってくる担当の事だよぉ…』

『えぇ!泣きそうになりましたよぉ。まだ、2ヶ月ぐらいしか経過してないのに…って!ひどいなぁ…って!小説家はみんなそうなんだぁ…プロだからなぁ…って、本当に心配しましたよぉ…』

『あぁ…ごめん、ごめん、泣かせるつもりはなかったのに…俺の為に泣いてくれてありがとう。』

『違いますよぉ…坂浦先生はやさしいけど…他の先生は厳しくて大変なんですって…私はここに来るのが楽しみなんです。他の先生を掛け持ちしている先輩は常に沈んでますよぉ。』

『だろうなぁ…小説家は常にピリピリしているからなぁ…原稿を書けなくなったらプロとして、お手上げだからなぁ…特に純文学を書いている小説家は一文字、一文字に魂を込めて描いているからねぇ?』

『そうなんですねぇ?先生は純文学は書かないのですか?』

『純文学を書くには、常に色々な書物を読んだり、図書館にこもって調べたりと書かなくてはならないからなぁ…』

『でも、書きたいと思っている?』

『そりゃ、これだけで稼げるならやっているさぁ。あぁ、そうそう、朝食の件はごめんねぇ、かなり忙しいのに…申し訳なくてねぇ?最近は忙しくて買い物さえも行けなくて…自分が作れば簡単なんだけど…1度集中すると机に向かってしまうから…』

『いえいえ、私も少し弱きになってしまいました。こちらこそ、すいません。あぁ…もしよろしければ、どんな料理が好きなんですか?今度、作りますよぉ!』

『えぇ、本当に!うれしいなぁ…』

『そうだなぁ…『オムライス』『カレー』『カルボナーラ』『ミートソース』『アンチョビとチーズのクラッカー』『チーズフォンデュー』『ハンバーグ』『辛ラーメン』『うまかっちゃん』『日清のシーフードのカップヌードル』かなぁ?』

『ちょっと、ちょっと、最後に即席麺からのカップラーメンって…馬鹿にしてません?』

『いやいや、最近の即席麺やカップラーメンも馬鹿にならないって!

そのまま、お湯入れて、3分では食べないって、忙しい時は別だけど…

『最近では日清のシーフードのカップラーメンをアレンジするなぁ…例えば、フライパンで豚肉、海老、もやし、人参、玉葱、椎茸を塩、胡椒で軽く炒めて、湯通ししたアスパラ、ブロッコリーを載せて、最後に粉チーズを振りかける感じかなぁ?』』

『えぇ!すごい、すごいですよぉ!先生は料理の天才でもあるんですねぇ?』

『そんな事はないって…プロで働いているわけではないし、料理を習った事はないからねぇ?』

『もしかしたら、一緒に料理教室なんて、興味があるんですか?』

『もちろんさぁ!料理や手芸、裁縫、園芸なども興味はあるなぁ。』

『もちろんこんな性格だから…一緒にやりたいけどねぇ。』

『へぇ、世の中には女子力高めの男子がいるけど…それ以上なんですねぇ?』

『確かになぁ…常に化粧水と乳液とファンデーションは欠かせないなぁ…あぁ…誤解はするなよぉ!ホモではないからなぁ!』

『もう、強調しなくても大丈夫ですって!草食系男子というよりもハンバーグ系男子ですからねぇ?』

『えぇ、ハンバーグ系男子って?』

『ハンバーグの中には、色々な具材が入っても美味しいでしょ?チーズや野菜やシーフードなどそれにスープとも溶け込むから私は好きだなぁ…。』

『なるほど…新しい発想だなぁ…確かに、ロールキャベツ男子は聞いた事あったけど…ハンバーグ系男子は初めて聞くなぁ…』

『あぁ…それだぁ。ロールキャベツ系ですねぇ…見た目は草食系、でも心は肉食系…でもなぁ…最近はアスパラベーコン系かなぁ…外見は少し肉食系で少し、地方のホストになってきていているけど…服装は草食系、色々な知識も豊富で意外と奥手のタイプかなぁ?』

『おいおい、悪口はいかんなぁ…』

『違いますよぉ。悪口というよりも魅力的で女性は常に喜ぶだろうなぁ…って。でも、心配になりそうだなぁ…』

『そんな事はないって、一途だって…』

『でもなぁ…先生を含めて男子は信用出来ないからなぁ…』

『まてまて、それよりも、女子は常に彼氏が変わっているように感じるけどなぁ…』

『違いますよぉ。寂しいから側にいて欲しいんですって…』

『という事は常にかまって欲しいのかぁ?』

『束縛する程ではないけど…やっぱり、1週間に1度や2度ぐらいなら逢いたくなるかなぁ?せめて、2週間に1度ぐらいは連絡は欲しくなるかなぁ?』

『あぁ…でも、先生とならいつでも逢いたくなるなぁ…だって、常に新鮮な感じだからなぁ…あぁ、先生はもしかしたら、肉食系や草食系、ロールキャベツ系、ベーコンアスパラ系ではなくてミックス系だなぁ…まぁ、解りやすい性格で楽だけど…』

『はい、はい、ありがとう。あぁ…原稿が出来ているから持って行ってなぁ…』

『はい』

『では、原稿が出来たら連絡するねぇ?』


『あぁ、良かった…本当にビックリしたなぁ…それにしても、稲村さんだけに…もう、トキメクフレーズを照れなく話せるって…もう、素敵過ぎるなぁ…本当に彼女になったらうれしいなぁ…』


『あぁ、良かったなぁ…まさか、担当が変わったら、最悪だよなぁ…おばさんやおじさんだと執筆どころではないなぁ…想像力もフレーズして最悪な結果になるなぁ…それにしても、久美ちゃんは泣いた顔も可愛かったなぁ…今度はどうやって泣かせようかなぁ…出来たら、サプライズで喜んだ涙がみたいなぁ…さぁ!仕事、仕事、やるぞぉ!』


今日の百人一首は…

『藤原敏行朝臣〜住の江の 岸に寄る波

よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ』


20××年

『先生、すでに2週間も連絡取れないなぁ…。それに、マンションに行っても不在だしなぁ。参ったなぁ。』

『プル、プルル…』

『えぇ!先生からだぁ。もしもし…大丈夫ですか?』

『あぁ~、ごめん、ごめん。ちょっと、1人で考える事があってなぁ。誰にも連絡しないでホテルにいたんだぁ。ごめんなぁ。』

『本当ですよぉ。せめて、電源を入れておいて下さいよぉ。心配したじゃないですか?』

『もう、先生のせいで〜あぁ…最近は寝不足だなぁ…ちょっと、先生は寝不足じゃないんですか?』

『大丈夫だよぉ。パワフル全開!だなぁ。』

『もう、先生は元気じゃないですか?もう、最低!それにしても、何で夢にまでこそこそ、お忍びで旅行なんて嫌だなぁ…。』

『へぇ~、そうなんだぁ。最近は、久美ちゃんが毎日、夢に出てきて幸せなんだけどなぁ。』

『えぇ?夢に私が出てくるんですか?』

『もちろんだよぉ…夢に出てきて、昨日は海で一緒に泳いだり、ビーチパラソルの下でハワイアンドリンク飲んで海を眺めたなぁ…その後にホテルの最上階にあるレストランでワインを飲みながら夕陽を眺めて幸せだったなぁ…。その後は部屋で愛を語りあったんだぁ。』

『えぇ!それって、同じ夢を見たんだぁ!うれしいなぁ…あまりに激しくて…すっかり、寝てしまって、腕の中で目覚めるのぉ。』

『もしかしたら、朝食は?焼きたてのクロワッサン?』

『えぇ?何で知っているんですか?焼きたてのクロワッサン。他に…パンとスクランブルエッグとオレンジジュース、サラダだったなぁ…』

『えぇ、まさか、そんな事があるなんてぇ。不思議ねぇ?』

『もしかしたら、その前日の夢は…覚えている?』

『覚えていないけど…私も、先生の夢を見ますよぉ…どんな夢だったかなぁ?』

『確か、久美ちゃんが海で水着になった時に、俺が覗きにいって、ホースで水をかける夢じゃなかった?』

『あぁ…そうそう、そうだったねぇ?』

『それに、覗きに来たのではなくて、私が『虫って〜』叫んだったねぇ?』

『すごいねぇ?本当に夢の中でも愛しあっているんだねぇ?』

『そうだねぇ?私達、どちらか1人を残せないねぇ?』

『夢の通ひ路 人目よくらむだなぁ…』


『えぇ!夢かぁ…はぁ、素敵な夢だったなぁ…最近は夢をみるなぁ…現実になったらどんなに幸せなんだろうなぁ。あれぇ、えぇ、これはグアムの航空券って…まさかぁ…海外旅行なんて行った事がないけど…なぁ。日付は?消えているなぁ…。』








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