第15話 ボーマの決断


寝ていた俺だったが机の明かりが目に写ってしまったために、目が覚めてしまったので目を開けて体を起こしてベッドから降りて暖かいお茶を飲みたかったので、急須のあるところへ向かった。


向かう途中、明かりの正体が目に移る。そこには、必死に本を執筆しているユウがいた。執筆している本は白の魔導書である。今日、ユウが決意し、みんなのために復活させようとしているのだ。


魔導書継承式典を行った者にしか、魔導書は作れない。ウールラは自分の身の危険を察知してか、捕らえられる前にユウに継承式典を行っていた。



そのため、ユウは魔導書を作成できるのである。ユウは起きて移動している俺には集中しているため気づいていないようだ。俺は恐る恐るユウに近ずき、後ろから手を腹に回してユウの体を包み込むようにして抱きついた。


「ユウ……頑張ってるな……。俺はお前を応援してるからな……。だが、休息も大事だぞ。お茶を淹れて来るから待っていてくれ」


「……。ボーマさん。あり……ありがとうございま……す。体、手、腕、暖かい……」


「こちらこそ。そんなに暖かいか?ユウが望むならしばらくこのままでいてもいいんだけどな」


すると、ユウは顔を赤らめさせながら照れ口調で


「お、お願いします。このまましばらく居させてください……」


相変わらずユウは可愛いなぁと思っていた。


「俺にはこのぐらいしかできないからな。明日、魔導書が完成したら俺に読ませてくれないかな」



「是非。お願いします。最初にボーマさんに読んでいただきたかったので。嬉しいです」


「そうか、ならよかった」


俺はしっかりユウの温もりを感じれたので、抱擁を解いて急須がある所に向かい、着いたので近くにある三つのカップのうち二つを取り、ユウの分と俺の分にお茶を淹れた。


「ユウ、お待たせ」


そういいながらカップをユウの座る机にゆっくり置く。


ユウは1口飲んだあと



「暖かくて、美味しいです。私、これがあれば朝まで頑張れるかも。ありがとうございました」


俺はあっという間に。いや、聞いている間に飲み終わってしまった。カップの片付けに向かう前にユウに言う



「礼には及ばねぇさ。ユウが頑張れるならなんだってしてやるよ」


「感謝します……」



こうして、俺は再び深い眠りについた。そして、夜が開けた。


起きたと同時にクリスタル王から報告が入った。



「昨夜……カルトンが死んだ」



俺たち三人は口ごもる。


少したったあとに俺は驚きを隠せずにいた


「な、カルトン様がお亡くなりになっただと!?ってことは城は完成せず、大事な家族兼戦力がいなくなったということか……。ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙、カルトン……様……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」



俺は泣き叫んでいた。仲間の1人や2人でも死ねば誰でも悲しむ。


「い、一体誰がカルトン様を殺したんですか!?返り討ちにしてやる。クリスタル王、俺に一軍を任させてください」



しかし、クリスタル王は即答する



「だめだ。カルトンを殺したのは皇帝だ。ザッカーラの街が落とされた今、我々は残る領土の守護をしなければならない。カルトンが殺られる程の実力者だ。油断は禁物だ」


「で、ですが!!あなたは大事な家族を失ったんですよ!?なんでそんなに冷静に居られるのですか。私は冷静になんて居られません。王が動かぬというならば、私自ら軍を率いて皇帝を倒しに行きます!」


「その必要はない」



どこからともなく低い声が聞こえた。目の前にいるクリスタル王とイスリアは顔を真っ青にしている。一体誰が言ったのか。


それは分かりきったことであった。皇帝陛下である。


「私がどうしてこの場にいるのか知りたいという顔をしているな。貴様らは、ここで死ぬ運命なのだ。特別に教えてやる。私は黒の魔導書にある幻影魔法を使って、ここまで誰にもバレずに来れた。貴様ら程度の者ならば、私一人で十分だからな」



俺は歯ぎしりをする。イレギュラーだ……てか、未来予知で見ていた世界ではイスリアは父上は戦好きと言っていなかったか?なのにこの場にいるクリスタル王は攻めようとしないではないか。



「あれが……あれ……が。妻を殺した、皇帝……。許さ……ぬ。よくも……よくもぉおぉおおお!」


俺は怒り狂うサド師匠を捉える。だめ……だ。師匠!!俺は咄嗟に体が動き、師匠を捕まえる。


「ダメです師匠!あれがほんとうに皇帝なら、とてつもなく強い。師匠もたしかに強いですが……今はまだ、その時ではありません!!」


「はぁあ?黙ってあやつを見ているだけなんてできるわけねぇよ!!」


俺は下の階にいる皇帝を見つめる。すると目があってしまったので思わず逸らす。


今にも手すりから飛び降りて皇帝に攻撃を仕掛けようとする師匠を必死に食い止める。


「師匠!お気持ちは分かります!しかし、……グッ!俺に任せてくれませんか!師匠への恩返しとして、必ず、必ず皇帝を討ち取ってみせます!」


すると、手すりから飛び降りようとしていた師匠は手すりから手を離して冷静になった。


「お前がそこまで言うのであれば……。仕方あるまい、任せる」


「あ、あ、ありがとうございます!!」


師匠にお礼をしたあと、ユウ、クリスタル王、イスリアの順番に死ぬかもしれないので礼を言っておく。


「ユウ……。昨日、ありがとな。おかげで元気がさらに上がったよ。クリスタル王、迷惑かけてばっかりで申し訳なかった。もう少し役に立っていればよかった。そして、イスリア……俺はイスリアのことがほんとは大好きだ。将来、結婚したかった。身分の差など関係なくな。今までありがとう」


最後に一番お世話になった師匠に礼を言う


「師匠。今まで稽古や鍛治等、色々教えてくれてありがとう……。必ず、恩返しを果たして来るから待っててくれ」


礼を言われた四名はみな、涙を静かにポロポロ流していた。ユウは


「や、やだ……行かないでよ。行かないで……ボーマさん。ボーマさんがいなきゃ私……私はなにもできないよ!!」


次にクリスタル王が


「フッ、君の決断はまるで勇者そのものだな。俺は君を勇者として、皇帝を倒したあかつきには讃えよう。健闘を祈る」


次にイスリアが


「はぁ?『 大好きだ』ですって?私のところを好きになる意味が……うぅ……わ、わからないよ……。ボーマ君、必ず生きて帰ってきてね。その時は私からあなたに褒美を与えるわ」



師匠は静かに頷くだけだった……最後にイスリアから勝ってもいないのにキスのご褒美を受け取ってから、俺は後ろを向いて、手すりに手をかけて、「行ってくる」と言ってから飛び降りて皇帝と対面した――

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