第13話 皇帝の実力


ネオ・グランデ、ウールラ・アウストロが殺られてから、約十日経過した。その十日の間に帝国内では色んなことが起こっていた。



例えば、帝国に対する不満から、征服されていた各地は次々に独立していく。その中でも、台頭していたのは東領のクルーツ家である。それを恐れた皇帝は、自ら軍を率いて東領再制圧を目標に進軍していた。


「陛下、彼らクルーツ家率いる反乱軍1号はかなり手強いかと思われます。陛下は最初から前線に出ないよう、お願いしたいのですが」


近くにいた一人の兵士が、我に忠告してくる。



「あ? わしがクルーツ家に負ける程弱いとなんじ は申すか?無礼者めが!ましてや、我が実力をそなたは帝国の兵でありながら知らないと言うんじゃなかろうな?」



すると、兵士はなぜか血相を悪くしている。我はそこまで怖いのか?



「ひ、ひぃいい!滅相もございません……!!い、いえ!けっっして!陛下をばかにしているつもりはもちろん!いっさいなく!ただ、心配しただけです!!無礼なことだったのであれば、大変すみませんでした!!」


大勢の兵がいる中、彼は精一杯の謝罪と土下座をする。なぜ、そこまで恐れる必要があるのか。無理もないだろう。我をなぜ恐れるかわかった。我の傍らにいる、我に絶対の忠誠を誓うの剣士であり、魔法使い……。その名は、青色の鬼の形をした仮面に顔が覆われているため、見ただけではわからない人物――、ウールラ・アウストロがいるからである。


なぜ、死んだはずのアウストロがこの場にいるかというと、我を無視して作られた法律の中で絶対使ってはならぬ。と、言われている禁則魔法……、蘇生魔法を使ったからである。


我は蘇生魔法だけを使ったのではない。蘇生魔法に加えさらに、『ガーラル・インフィニティ・ソウル 蘇生者最大強化魔法』を使ったからである。これを行うことにより、死ぬ前より遥かに強くなったウールラが誕生する。



「なにも、そんなに恐れることはない。こやつは、我に危害を与えたと認識した者にしか攻撃せん」


「そ、そんなこと言われましても……怖いものは怖いんです……」


兵士はわなわなと震えながら弱々しい声で訴える。



「たしかに気持ちはわからなくもないが……」



すると、前線に使える戦力をありったけ集中させていて、その戦力の中の一人である将軍、ベドが声量拡張器を使って我に状況を知らせてくる。



「陛下!!東領に到達いたしました!どうしますか!?」


最後、素っ頓狂な声をベドがあげる。我は的確に声量拡張器を使って前線に知らせる。


「とりあえず、近くの街を攻め落とすしかなかろう。これより、全戦力を集中させ、一番近くにあるザッカーラという街を攻め落とす!!逆らう者たちは蹂躙して貰って構わない!いざ、改めて出陣!!」



「うおおおおぉ!」と、軍全体が意気込みを声に現して反応する。


それから1日経ち、ザッカーラの街ではカルトン率いるザッカーラを守る部隊が準備を進めていた。


「まずいな……。この調子では到底『城 』とかいう建物は完成しない……。昨日、敵の軍勢の咆哮が聞こえたからな……。まずいぞこれは……」


カルトンは、城の設計図が描かれている紙を握りしめながら順調に進んでいる城工事を眺めている。やはり、人手不足がこの深刻な状況を作っている。敵軍はもう、すぐ側まで来ているというのに……。



「矢を放て!!!!」


皇帝は声量拡張器を使い、軍の一部である弓部隊に命じた。すると、当たり前だが部隊が一斉に同時に敵のいるザッカーラの街目掛けて火の付いた矢を射撃する。これは帝国初の、火矢による攻撃である。火矢の威力は絶大で、ザッカーラの街は一瞬にして野原と化した。



火矢の火は皇帝の火属性魔法が付与されているため、普通に火を付けるよりもさらに高火力な威力を誇る。



ザッカーラにいたカルトンはまだ深夜で寝ていたため、この攻撃には気づけずにいた。「ぎゃーーー!」「きゃああああ!」「助けてくれーーー!」「水!!水がほしい!!ぐあああ!」


深い眠りに着いていたカルトンだったが、余りの悲鳴の大きさに耐えきれず、起きた。目を開けてまずは宿を出る。宿から出た時に見た光景はまさしく、残酷そのものだった。ザッカーラの街にあった、家や店や人や作り途中の城。ありとあらゆるものが破壊され尽くされていたのである……。



「こ、これが王……皇帝のやることかよ……」


ザッカーラ郊外にいて、無事だったカルトンだが、余りの深刻さに呆気にとられていた。帝国軍はきっと周りの山のどこがに潜んでいるはずだ。呆気にとられながらも勝てる方法を探していた。


しかし――希望はすぐに潰えた。皇帝自ら一人で自分の前に現れたからである。



「我のことはご存知であろう?」

「ああ、知っている。賢者を一人、殺したんだろ」

「うむ、殺した。カウンター・ソウル 反撃魔法によってな。弱かった。実に弱かったぞ、賢者という者は」


「そうなのか。だが、俺が弱いとは決まってないぞ?」


俺は、背中にかけていた鞘から剣を引き抜き、抜刀する。そして構える。


「そのひ弱な剣になにができる。我の魔法に打ち勝てると?」


皇帝に勝てるかはわからない……でも、今ここで、皇帝が一人の時に倒せずしていつ倒そうか!


俺は剣に力を込める。絶大な力を剣に与えるように、意識する。頑張るしかない……ここで、皇帝を倒せる程の力を……!!我が剣に与えてください!!神様!


すると、俺の装備している戦士の剣に赤い光が集中する。そして、剣がちょっとばかり大きくなる。さらにありったけの俺の魔力を剣に注ぐ。すると、剣から大量の熱が発生する。その熱は徐々に広がっていき、触れた地面を溶かす。地面すらも溶かす威力を持つ熱なんて、この世界にありはしない。


「へ、へへ。これなら、お前に勝てるはずだぜ?」


「ふむ、たしかに未知なる力ではあるな。しかし、到底我に及ぶ程の力ではない」


皇帝の喝により、その熱は全て打ち消されてしまった。あっというまだった。皇帝は近くにいるのか、なにものかに声をかける。すると、影から出てきたのは大軍だった。恐らく幻影魔法かなんかを使ったのだろう。


俺はして殺られたということだな……。そして、いきなり出現した大軍のうち10人が槍を携えて俺を囲み、そして10人全員の槍が同時に俺の体を突き刺した。


こんな哀れな死に方をするなんて、思ってもみなかった……。俺は槍が抜かれたあと前に倒れ、その場で息を引き取った――

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