Book・The・World『白紙を自分の冒険で描いていく異世界冒険物語』

龍牙王鳳

第一章 真ん中から最初へ。最初から真ん中へ

第1話 真ん中あたりのページ

この物語の主人公である俺の名前は、高橋龍生 たかはしりゅうせい。ぼっちで本好きで、周囲からはイケメンオタクと言われている。俺は自分がイケメンということを自覚していないのだが……。現在俺は、最寄り駅のそばにあるアニメ専門店にて、新作のライトノベルがないか探していた。俺は普段読書しかしないのでこの店にあるラノベはほぼ熟知している。金持ちだからこそできたわけだが。本棚を片っ端から見回っていると、見たことのないタイトルのラノベが本棚の2段目あたりにあった。それを手に取って見ると後ろには同じ本は並んでおらず、この1冊しかないしSNSでも見たことがなかったので怪しみながらも本を開き読み始める。


「ん?この本……白紙だらけじゃん、なにがBook・The・Worldだよ。ますます怪しいな」


俺は1人ブツブツ言いながら、本を元の並んでいた場所に戻そうとした……その時。

本から白い光が強く輝き初め、白紙だったページがパラパラ勝手にめくられていく。そして真ん中あたりのページになると、その動きは止まって強くページが輝いている。すると、俺は体を本に吸い込まれていくような形で本の中へと入っていった――。




俺は、本に吸い込まれていったはずだが息をしていてまだ生きているようだ。死んだと思っていたらしい。俺は顔を起こして前を見ると、そこには立派な大人が立っていた。


「あんちゃんよぉ、そんなに酒ばっかり飲んでたら体に悪いぜ。程々にしときな」


俺は未成年だぞ?なのに、なんで俺は酒を……。もしかして俺は酒に溺れてしまった20代前半の男に生まれ変わったというのか……?いや、生まれ変わりではなく俺はこの男に召喚され、体に俺の心が入り込んだということなのか……。どうにか状況整理をした俺は、目の前の大人に向かってこう言った。


「ヒック。大丈夫だぜ旦那ぁ、オレァ酒が無いと生きていけないから。ヒック。酔っ払うことぁねぇんだぜ。ヒック」


「あんちゃんを俺は初めて見るが、そんなに酒を飲んだ客は初めてだぞ。まあ、金払うってんなら別に何杯でも飲めって話なんだがな」


俺はめっちゃ飲んだらしいので周りを見たら、俺の座っているカウンター席。俺の顔の近くには1Lぐらいの量がある酒が10瓶ぐらい空になっていた。


「あれ?俺こんなに飲んだっけ。ヒック。金はいくら必要だい?ヒック」


「ふん、1本あたり500Zだから5000Zだな」


5000Zってどのくらいの金が必要なんだろ。この世界の通貨はZと書いてゼニーと読むらしい。俺はおそるおそる財布を確認する。


「……。財布がねぇええええええ!」


「財布ってなんだよあんちゃん。そんなことより、早く金を支払ってくれねぇかな」


「ちっ!この世界じゃ財布の概念は存在しないってことか」


俺はブツブツ言いながら、なんども頭を下げる。金はありませんって言いながら。しかし、何回か下げたあとにカランカランと、鈴がなるような音が店中に響いてドアが開く。そこから足音が近づいてくる。顔を見上げると、そこには可憐な姿で髪は青色のロングへア、白に赤色の線があるブーツに、白のミニスカ、銀のコテや、やはり白と赤で出来ている鎧を身につけた絶世の美女と言っても過言ではない、とてもとても美しい女性がいた。彼女は口を開き、こう言った。


「私の名前は、イスリア=フォン=クルーツ。18歳で、クルーツ家3代目当主である。この酒場の主人である、そなたに話があってきた」


俺はこの美しく綺麗な声を放つ女性を前にして呆気にとられていた――

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