前世で世界を救った勇者だけど、生まれ変わったら魔王でした

@saradamaki

プロローグ

第1話 プロローグ

その城は、数日前までは荘厳な威厳を放ち、おびただしい数のモンスターを内包した『魔』の結晶だった。


上空では雷が荒れ狂い、地上には瘴気が吹き荒れる、一般的な人類であればそこに存在するだけでも最上級の装備や神話級のアイテム、極限まで成長させたスキルが必要な劣悪な環境にその城は建っていた。


その城を人は『魔王城』と呼ぶ。

もちろん、城主は『大魔王』である。


大魔王は、かつては世界の覇権をかけて神々と争い、1000年の歳月をかけて神々を空の彼方へと追いやった最強最悪の存在。


数多の強力なスキルと魔法を難なく扱い、その肉体はどんな鉱物よりも強固であり、肉弾戦でさえも高度にこなす、反則のような存在。

それが、大魔王。


そんな冗談のような存在である大魔王が今、壮絶な戦闘をしている相手は、なんと人間であった。

人類の希望、『勇者』パーティーだ。


全人類の希望、『光の勇者』


その拳に砕けぬものは存在しない、武闘戦士『拳帝』


この世の武器と防具を全て支配する。『剣帝』


腕や足の切断欠損も瞬く間に癒し、森羅万象の理を理解し操る。『賢帝』


これまた冗談の様な才能を有し、たゆまぬ鍛錬により限りなく生物の戦闘力の限界まで達した者達が4名。


その激闘は互角であった。

天を割り、地を砕き、大気を切り裂く攻防で大魔王自慢の城も、果てなき時間をかけて集った大軍団も、砕かれ、燃やされ、朽ち果てていった。


もちろん、勇者と三帝達も無傷では済まず、腕はちぎれ飛び、骨は砕かれ、魔力は枯渇し、その度に賢帝の癒しの力で立ち上がるものの、鎧は砕かれ、それぞれの神聖武器も、もはや機能しなくなっていた。


そんな激しい戦いも終わりを告げようとしている。


『ふむ。これほどまでに歯応えのある相手がまだ存在していたとは……正直驚きだ。』


見た感じ20台半ばの青年にしか見えない、漆黒の長髪を腰まで伸ばした整った顔をした中肉中背190センチ前後の男が大魔王だ。

その肉体は至る所を切り裂かれ、出血しているが勇者パーティーに比べれば比較的軽傷のように見える。


「ふぅっ!はあっ!…ごほっ…呆れるくらい強え……」


「…本当、何なのよ…こいつ弱点とかないの??……」


勇者パーティーでまともに動けるのは、今や『勇者』と『拳帝』の二人となっていた。

『剣帝』は両腕と右脚を無くし、『賢帝』は魔力の枯渇から意識を失っている。


『ん?余の弱点??あるわけが無かろう??』


こいつ何言ってんの??と言いたげな表情で拳帝を眺める大魔王に再び勇者が切り掛かった。


「弱点があろうがなかろうが!!!」


「お前は倒すしか!!!」


「ないんだ!!!!!」


勇者の一刀一刀を右に左に躱しながら


『……ふむ。何故だ??』


大魔王が問いかけてきた。

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