一人目の依頼者 9y2m

「もしもし、こんばんは」


 相手はまだ声変わりもしていない少年だった。

 こんな時間にまだ起きているのか?


「もしもし、どうしたの?」

「あの、誰にも相談できないことがあって……」


 最初の相手は小学生。子どもでも依頼ができるなんて、どんなシステムになっているのだろうか。

 内容は、学校でいじめに遭っているということだった。

 最初は仲良くしていたのに、いつからか仲間に入れてもらえなくなり、ノートへ落書きをされたり、物を盗まれたりするようになった。親には心配かけたくないのでまだ言えていないとのこと。

 事態は深刻だ。そうか、事前登録でそのような経験があると書いていたから私が選ばれたのか。

 私はただただじっとその話を聞いていた。


「そっか、それは大変だったね。おじさんもね、そういう経験あったよ」

「ほんと?」

「うん、あの時はとても辛かった。でもね、クラス替えがあってからは全然平気だったよ。新しい友達もできて、中学になってからは何事もなかったように過ごしてる。だから大丈夫、辛いのは今だけだよ」


 色々話した後、気づけばもう三十分経っていた。


「おじさんありがと、頑張ってみる」

「そうだね、いつでも相談してね」


 そんなやりとりで一人目の相談は終わった。

 世の中悩んでいる人は結構多いんだな、しかも子どもも参加しているとは思わなかった、そんなことをぼんやり考えていると、すぐさまピリリリ、と動画通信アプリのコール音が鳴った。

 こんなに続くものか?

 驚きながらも私は依頼内容を見た。そして何も考えずにそのコールに出る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る