短編「ハロウィンの少女」

鳩の唐揚げ

ハロウィンの少女

「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」


「おかえりください。」


また知らない子供がお菓子をもらいに来た。何故知らない子にお菓子をあげなくてはならないんだ?これだから俺はハロウィンが嫌いなのである。まず、ハロウィンにいい思い出がない。


「お菓子を要求する!お菓子をくれなければ、いたずらを強行するぞ!」


一言で分かった。また子供がやって来たけど。今度は違う。

見覚えのある変な少女がやって来た。


「お前にいたずらされたら何されるかわかんないな。」


「ふふっ、久しぶりね、光ちゃん。」


「ああ、久しぶり。」



その少女は毎年やってくる。ハロウィンの夜に。


「光ちゃん、今は中学生だっけ?」


「違う、今は高校生だ。」


「そうだっけ?よく覚えてないや。」


そして毎年、この少女がやってくると、こんな会話をして散歩をする。

夜が明けるまで。


「子供の頃、この川でよく遊んだよね、」


「そうだな、そういえばそんな事もあった。」


「まぁ、私はまだ子供だけど。」


「ああ、そうだったな。まだ、ちっさいままだ。」


「なっ、ちっさいって!今ちっさいって言ったな!」


少しからかうとすぐに怒る。

そんなところが少し愛らしい少女だ。

でも仕方ないだろう。本当に小さいんだから。君の成長は小学五年で止まってますよ。


この少女と俺は幼馴染だ。

初めて一緒に遊んだのは、俺が5歳くらいの時か?その時はこの少女は7歳で、俺よりも少し背が高かった。

2歳しか違わないのに、その時は本当にお姉さんに見えた。


「ねぇ、光ちゃん。昔みたいに〇〇ねぇちゃんって呼んでくれないの?」


「嫌だよ恥ずかしい。」


「えー、今は私たちしかいないんだし、いいじゃない。」


「なっ…分かったよ…

…ねぇ…ちゃん。」


「ふふっ、ありがとう、光ちゃん。」



そろそろ、夜が明けて来たようだ。


「あ、そろそろ私行かなきゃ。」


「うん。」


「じゃあ、またね。」


そう言って少女は帰っていった。

いたらいたでめんどくさいが、いなくなると少し寂しい。


「あ、お菓子。」


せっかくあげたお菓子を、あの少女は忘れていってしまった。


「はぁ、渡しにいくか。」



その場所は俺の家から少し歩いたところにある。ここに来るとなんだか寂しくなって来る。でも、そんな顔を見せてしまったらあの少女が悲しんでしまうだろう。


「さっき会ったばっかだけど、来たよ。」


そう言って俺はお菓子をそこに置いた。


「…お菓子だけ置いてあるってなんか不自然だな、花とか線香でも買ってくればよかったかな。」


「まぁ、いいか。なんか悲しくなっちゃうし。じゃあ、またね、遥香ねぇちゃん。」


こうして俺のハロウィンの1日はやっと終わった。


あの少女は来年も来るのだろうか。

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短編「ハロウィンの少女」 鳩の唐揚げ @hatozangi

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