何でも解決するマンの困惑

南雲 皋

プロローグという名の前作紹介

 僕は”何でも解決するマン”こと鴨宮かものみや あらた



「しんちゃーん!」


「あらただっつってんだろ! ってゆーか今説明中だから! 帰って!」


「ちぇー」



 失礼。

 今出てきた少女は追々紹介するので心の片隅に留めておいて頂きたい。


 コホン。


 気を取り直して。

 これはとある作品(『何でも解決するマンの苦悩』)の続編であり、これから話す内容は前作を読んでいれば読まなくてもいい部分である。


 形式上これをプロローグとする。


 前作をお読みになった方はプロローグをかっ飛ばし、第一話に行っていただいて全く問題ない。

 ただ、前作の説明をするにあたり、前作とは違った表現や、前作を更に補完するようなことも話してしまう気がするので、読んでいただいても構わない。

 流し読み程度に。


 そしてこれから話す内容は、前作のネタバレを大いに含んでいる。

 そのため、もし前作を何のネタバレもなしに読みたいと思ってくださった方は、今すぐブラウザバックしていただき、またお目に掛かれれば幸いである。


















 さて、では前回までのあらすじという名のネタバレに行くとしよう。


 まずは僕が何故、”何でも解決するマン”を名乗っているかというところから説明したいと思う。


 僕はいわゆる“いじめられっこ”である。

 小・中学校での嫌な思い出から逃げるため、僕は日本一入試が難しいとされる帝国学園に入学した。


 ようやく小・中学校の学友いじめっこから解放されたと思いきや、僕の元来のパシられ体質のせいであろうか、入学早々『おめー、いっちょパン買ってこいや』されたのである。


 そのため、僕は“何でも解決するマン”を名乗ることにした。


 そうすることにより、僕はパシられているのではなく、依頼をこなしていることになるからだ! えへん!


 発想の逆転とはこのこと。

 僕は僕の生み出したこの置換システムを大いに気に入っている。


 それから、この話が“ラブコメ”と称される理由だが、それにはまず空園そらぞの 美鶴みつるのことを説明しなくてはならないだろう。


 冒頭で僕をしんちゃんと呼んだ彼女こそが、空園女史である。

 彼女は日本でも有数の資産額を誇る空園財閥のご令嬢。

 そして今では……その……僕の彼女でもある。


 僕のことをしんちゃんと呼ぶのは空園女史だけであり、彼女以外の人間が僕をしんちゃんと呼んだ時のことは想像したくない。


 空園女史は僕に『私の悩みを解決してください』と言ってきた。

 悩みの内容は、僕なら分かるから言いたくないと。


 僕は『空園女史の悩み』に悩まされながら、彼女に振り回される日々を送ることになるのだった。


 修学旅行費が消えた謎、そして体育倉庫の不気味な声の謎。

 他にも色々な学園の問題を解決している内に、僕はパシられることがなくなった。


 だが、一年生でありながら殆ど満場一致で生徒会長になった空園女史が、会長になって初めての挨拶の時に僕の名を出したものだから、僕は今や空園女史に並ぶ有名人になってしまったのである。“何でも解決するマン”として。


 “何でも解決するマン”を名乗るからには何でも解決する必要がある。

 それは僕も重々承知している。

 承知した上で自信があるから、名乗ったのである。


 何故、何でも解決出来る自信があるのかを説明する前に、まずは僕がどうしていじめられっこになったのかを説明しよう。

 その原因は僕自身の性質にある。


 僕は、他の人よりも遥かに多くのことに気が付くのである。

 一度見た物は忘れないし、目の前にある物を記憶の中の情報と結びつけて考えるのも、もはや癖のようになっている。


 それがおかしなことなのだと知らなかった僕は、仲良く話したいがために同じクラスの男の子が朝食べてきた物を当てた。

 それは口元から漂ってくる匂いであったり、服に付着していたパン屑だったり、言葉の端々から伝わってくるキーワードを拾い集めた結果だったのだが。


 僕が得体の知れない存在になるまで、そう時間はかからなかった。


 親も守ってはくれなかった。友達も出来ず、しかし不登校になる勇気もなくて、学校が終わると陽が暮れるまで河川敷をウロウロするのが日課になっていた。


 そんな時、僕はある男性を観察した。

 その男は僕に目撃されたあと、空園女史を誘拐したのである。

 聞き込みをしていた刑事に僕がその男の情報を教えたことで、犯人の居所が早い段階で発覚した。

 そのお陰で、空園女史は男に何もされることなく救出されたのだった。


 空園女史を守るため、結局その事件は公にはされなかった。

 僕にも、詳細は何も知らされなかった。


 ただ、公にはならないが感謝されてしかるべきことをしたんだよと、褒められただけだった。


 僕を唯一褒めてくれたその刑事さんの勧めで帝国学園に入学したのだが、どうやら空園女史は僕がここに入学することを知っていて、僕を追い掛けてきたらしかった。


 僕に助けられてからというもの、僕のことを調べ上げ、そして『僕に好きと言ってもらえない』悩みを解決するため、僕に近付いた。と。


 そういう訳なのだった。


 これから始まるのは、僕らが高校二年生になった年の話。

 可愛い(?)後輩と、それに関わる色々な出来事の話である。

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