彼岸と言えば <カクヨム版> おまけ

 そういうわけで、墓参りは無事済んだ。

 現世へと戻ると無精髭の啓介さんが待ちかねていて、私を見た途端、両手で抱えあげられた。

 車中泊をしたと言う彼を、少しきつめに叱る。

 ちゃんとホテルに泊まれって言ったのに、もうっ。


「よかった。本当に、よかった」

「大げさねえ」


 帰り道の車中は、もっぱら私が向こうの土産話をして過ごした。

 ちょっとスピードが速いのは、彼も私と同じ気持ちなんだろう。


 早く帰って、いっぱい甘えないと。

 私の番だからね、啓介さん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る