第38話 成長
「えっ?、、ど、どうなってるんだ、これは、、。」
なんで俺の部屋がこんなに草原化してんの?
一瞬部屋を間違えたのかと扉のナンバープレートを確認する。
や、やっぱり俺の部屋だよな、、。
「モモモッ!!ヒマリィーー!!!」
「ぐえへっ!」
プレートを確認していた俺の横顔に思いっきりミモリが突っ込んできた。
衝撃ですっ転んだ俺が起き上がると、今度はスライムが俺の顔面にダイブを決め込んでくる。
「ぐえっ!し、死ぬ!……はぁはぁはぁ。」
ま、毎回これなのか、、。
「てか、、なんかスライム、、なんか大きくなってない?」
カゲルがすっぽりと中に包まれてしまいそうなぐらいだ。
前よりも顔から引き剥がし辛かった訳だ。
「スライムだけじゃないんだよ!モモッ。私だって、ほらっ!」
ミモリが俺に背中を向けて身体をゆらゆらと揺らした。
「あっ、羽が6枚になってる!!」
確か前は4枚だった筈。
「モモモッ、凄いでしょーー!!」
「2人とも凄いじゃん!!」
嬉しそうな2人につられて喜んでいたところに下からマスターの声が聞こえて来る。
「ヒマリ君ー?どうですかぁ?部屋開きました?」
しまった!2人の空気に完全に流されてた。
俺はキノコ袋とスライムを何とか抱えて部屋に入った。
「だ、大丈夫!!部屋は開きました!ちょっと確認するので待ってて下さーい。」
そう言って、やけにネトついた扉の鍵をかけた。
「てか2人とも!何なんだよこの部屋は!マスターが苦情を受けて困ってるよ!」
床も壁も机もベットの上もビチョビチョ、、というかヌチョヌチョで隙間の無いぐらいにいろんな草が生えて来ている。
まともに座るところすらないけど、どうせ自分も汚いしな、、とベットの上に腰掛ける。
あぁ、、湿ってる。
「モモッ!だってヒマリが悪いんじゃない!!」
「えぇっ!?俺?!」
「モモーー!だって向こうで何回も危険な目に合って大怪我してたでしょ?私達契約してるからそれぐらい分かるんだからね!?モモ!どれだけ心配したと思ってるの?モモモッ!」
た、確かに、それは、、そうなんですけど。
「で、でもそれと部屋がこんなになるのは別だろ?それに俺はいくら怪我しても治るから大丈夫だよ。」
「治るとかそんな問題じゃないモモッ!」
「す、すいません。」
完全にミモリの勢いに押される俺。
「モモモ、反省したならいいよ。……私達、ヒマリが傷ついてるのを感じて、いてもたってもいられなくなったの。早く成長してヒマリを守らなきゃって、、。モモ、それでスライムとお互いの魔力を限界速度で吸収し合ったの。」
限界速度で吸収?
「モモ、最初はちょっとやばいんじゃないかなぁ〜と思ってたんだけど、モモモモ、意外とこれがうまくいってね、ほら、魔物は魔力を取り込んだ分強くなるからさっ。」
やばいんじゃ、、って、、。
「んで、それで?」
「まぁ、気づいたらね、、スライムはデカくなって分裂してさ、その上にヒマリが摘んできてた花とか草とかが根付いてお互いの魔力で急速成長しちゃった、、モモモモッ。」
テヘペロみたいに最後締め括ってるけど、、。
ため息をついた俺をみて、ヒマリが焦ったように言ってきた。
「で、でもね!モモッ、私達凄い成長したし、偶然だけど、他にもいい報告があるの!」
「2人とも、、。」
俺の様子に、2人はギクリとして前で正座した。
「2人に心配かけた事は本当に俺が悪かったよ。でもさ、気持ちは嬉しいけど、あんまり自分を犠牲にして頑張らなくて良いんだよ。ゆっくりで良いから。帰った時に2人が居なくなってたなんて事があったら、それこそ俺が立ち直れなくなるから。」
一気に成長するなんて事は、それなりにリスクもある筈。
それじゃ、俺のせいで2人が死んだってことになるかもしれないもんな、、。
「今回は俺も悪かったから、おあいこな。次からは限度を考える事!それに、ここは借り物の部屋なんだから、他人に迷惑はかけない事!」
「ヒマリィーー!!」
「うぇべっ!」
俺がそう言い切ると、また2人が飛び込んでくる。
思ったけど、俺はコイツらに甘いのかもしれない。
「と、所でさ、さっき言ってた良い報告って、何なの?」
ミモリが確かそう言ってたような気がする。
「モ、それなんだけどね!」
ミモリが、部屋の隅から草を引っこ抜いて持ってきた。
「こ、これって、、!!」
「そうだよ、薬草!モモっ!」
渡されたのは薬草だった。
しかも俺が持って帰ってきていたのと同じ、回復薬(中)になる薬草だ。
「こ、これって、、。」
ミモリによると、自分の本体と同じようにスライムに取り込まれた薬草はスライムの魔力を吸収し、さらにミモリの魔力に当てられて急速に成長した結果、効果の大きい薬草へと変化したそうだ。
スライムはミモリの方を吸収してる為、他の草花を吸収する事なく、スライムから魔力を逆に草花が取り込んだそうだ。
最初にそれを発見した時は偶然だったらしいけど、俺が薬草を探しにいってるのを知ってた2人は、ここで薬草を成長させて増やせないか実験もしていたらしい。
それに俺の怪我も治したかったんだそうだ。
まだ力のコントロールが上手くいかずに枯らせる物も多いみたいだけど、それでも2人が死なない限り、スライムの中に収まる範囲で無限に増殖成長させられるらしく、そのコントロール精度は増しているとか。
そして俺が帰る少し前に、スライムの中に溜め込まれた薬草の一部を、見事コントロールした魔力操作で薬草(回復薬中)に出来たらしい。
す、凄いな、、。
ってか、凄すぎて言葉が出ないんですけど。
俺が命懸けで取りに行ったあの間で、こいつらは俺よりもはるかに効率よく、こんな事をしてたなんて、、。
てか、これが上手くいけば俺もう薬草取りに行かなくても良いんじゃないか?
「ヒマリ君ーー?どぅ?大丈夫かなぁ?」
げっ、、また忘れてた。
「す、すいません!水を切り忘れた洗濯物を置き忘れてましたぁ!今片付けてます。」
なんて、苦しいにも程がある言い訳をする。
「そうかい!それなら頼みましたよー!」
よ、良かった、、、一応セーフか?
まぁ、でも取り敢えずここをどうにかしないと。
「2人とも!取り敢えず先にこの部屋をどうにかしよう。カゲルも手伝ってくれるか?」
「ワン!」
「ちゃちゃっとやっちゃおー!モモモッ。」
ーー
何とか部屋を片付け終わって、シャワーも浴びた俺達は、採取してきた薬草と2人が育てた薬草を持って隣の薬屋に向かうことにした。
一応、焼けたキノコも持っていく。
今俺の頭に乗っている小さいスライムは、分裂したスライムの一部だ。
流石に、あの大きさで体をよじ登って来られた時は動けなかった。
ダメ元で小さくなれないか聞いてみたら、小さい塊が分裂してきたから、こっちを連れてきたわけだ。
ミモリも、本体を部屋にいるスライムに残したまま付いてきた。
実体化した状態ではあまり本体から離れられないらしいんだけど、魔力量が上がったおかげでトトミアの中ぐらいはこうして行動できるようになったみたいだ。
まぁ、今は俺達にしか見えない様に半実体化状態なんだけど。
トミさんも俺を心配してくれてたみたいだし、早く顔見せとかないと、、。
ついでに、薬草栽培についてアドバイスも聞いちゃおうと、俺はトミさんの薬屋の扉を開けた。
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