第31話 乱闘
ど、ど、ど、ど、ど、どうしよう。
嘘だろ?
ドラゴンの姿が黒く変わってから、俺でも分かる程ヤバい感じが膨れ上がった。
これリアルにまずいんじゃ、、。
今考えている選択肢は3つ。
1つ目、頑張ってバレない様にこの森を出る(キノコは諦める)。
2つ目、周りの状況が治るまでここでじっとしている(でもいつ治るのかは分からない)。
3つ目、やけくそで塔に突っ込んでみる(最悪、髪飾りを外してスキルを解放して逃走する)。
まぁ、3つ目は流石にないかな、、なんて思っていると、俺の後ろの茂みにさっきよりも1回りデカくて早い火の玉が落ちてきた。
ヤバい、、このままじゃ此処にいても消し炭確定だ。
もう、キノコは諦めて戻るか、、と茂みを出ようとした瞬間、、俺の後ろの火の上がる茂みから今度はクソデカイ蛇が出てきた。
その蛇は俺には目もくれず、そのまま塔に向かってその長い体を引きずっていく。
で、で、ででかっ!!
えっ、あんなのもいんの?!
太さだけでも俺の胴体よりあるし、長さも10mはありそうだ。
見ると森の中から塔に向かって、それこそ何百匹の巨大な蛇が塔に向かって這い出てきていた。
それを空からドラゴンが火の玉で燃やしていく。
そりゃ、この塔の周りだけ植物が生えてない筈だわ。
蛇も負けじと、地面に降りているドラゴンに巻き付いては応戦し、1対1なら互角と言った所だろうか?
と言うか、最早、俺の目の前で魔物大乱闘がおっ始まったんだけど、、一体これどうなっているんだろう、、。
てか、この森ヤバくない?
これでオレンジ(危険度下から2番目)ゾーンって、冒険者ギルドはどんな判断基準で決めてるんだよっ!!
もしかして、俺が思っていたより皆んな強くて、俺は弱かったって事か?
じゃああの木のリングになったのも、やっぱり正確に出てたってことなのか。
じゃあ、ギルドの皆んな、、俺が思っていたよりもずっと化け物染みてたんだ、、。
若干現実逃避気味な俺は、茂みの中で
ヒュゥ〜〜……ドカーーン!!
「ぎゃぁぁぁあ!」
俺のすぐそばに火の玉が降ってきた。
砕けた足元と共に土の地面に投げ出される。
「痛ったぁい、、、え。」
顔を上げると案の定、バッチリ目が合う俺と魔物達。
「あ、、あは、あは、あは、すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」
走り出す俺に、容赦なく一斉に降ってくる火の玉、飲み込んでやろうと迫ってくる口。
俺は泣き叫びながら、魔物の間を縫う様に必死に逃げた。
なんせ上からも下からも攻撃が来るから、こっちが反撃する隙もない。
結構な量のドラゴンと蛇がそこら辺の地面に倒れているけど、蛇もドラゴンもまだいるのかと言うぐらい次から次へと出てくる。
若干、蛇が数で押されている様な気もすると、逃げながら辺りを観察する俺は案外この状況に慣れてきたのかもしれない。
すると塔の上でじっとしていたボスドラゴンが大きな体で空に飛び上がった。
開いた口の前に、いやーな予感しかしないサイズの火の塊が形成されていく。
あぁ、あれは、、ヤバい。
俺とは随分離れた場所に落ちたその球は、何十本もの木と蛇を一瞬で消し炭にして、地面を抉り取り、離れた場所にいた俺達もその爆風で吹き飛ばした。
飛ばされた勢いで、俺は塔に思いっきり身体をぶつけて転がり落ちた。
多分また何本か骨がいったような気がする。
森から出ようと思った筈が、最悪な事に1番離れたいと思っていた場所についてしまった。
此処から森を見ると、その間で繰り広げられている戦いに、全くと言って良いほど横断できる気になれない。
こうなったらもう、中に入ってしまうか、、と、俺は身体の痛みが引いたのを確認してから、塔の開いた横穴に滑り込んだ。
「な、なんだこれ?!」
塔の中は横穴から差し込む月の光が入り込んでいたから、暗くなく、思ったよりも明るかった。
だけどそれよりも、この巣の構造だ。
中は1つの大きな空洞で真ん中に1本の柱が通っていて、その柱にテーブル状の足場が螺旋状に連なっていた。
足場の上は巣になっているのか、卵とそれを守っているドラゴンの姿が見える。
今まさに、卵を産み落としているドラゴンもいた。
やっぱり此処は巣だったのか。
ってか、もしかして、、。
俺はようやく気がついた。
あれだけドラゴンが気が立っていたのも、蛇がこの巣に向かって来ていたのも、産卵期だったからと言う事に。
普通の動物ですら出産時期には気が立ってくるんだ、ドラゴンが卵を守ろうと、ああ変化したのもうなずける。
そしてその卵を蛇が狙っていると言うことも。
最悪な時期にきたんだ、、俺。
マジですか、、と、横穴の影で蹲っていると、一際大きく塔が揺れた。
何か大きな物が塔にぶつかったみたいだ。
そして最悪な事に、体勢を崩して横穴から中にほり出される俺。
それに気づいたドラゴン達のマジでキレてる顔。
この状況じゃ、確かに俺は蛇と同類と思われても仕方なかった。
「……あれ?俺、、何して、、。」
どうやら気を失ってたみたいだ。
嬉しいと言って良いのかは分からないけど、うまい具合にパンツ付近を残して服が消しとんでいるから、きっとさっき俺は火の玉で体を吹き飛ばされたんだろう。
見ると指先の方の再生がまだ出来てなかった。
何発撃ち込まれたのか分からないほど、俺の周りの地面はえぐり削られていた。
産卵期の母ドラゴン恐るべし、、。
もう少しここで死んだフリをかましてから、隙を見て出るしかないな、、と、そのまま薄目を開けて辺りを見回す。
さっきから何回も大きな揺れが続いているから外ではまだ戦いは続いているんだろう。
はぁ〜、本当に俺ってついてないよなぁ。
昔からそうだった。
思い返せば、小さい頃に村で年に何回かあった祭りでも、俺は1度も屋台で当たりを引いたことが無かった(気がする)。
どうしてもあの時欲しかった可愛い人形も、アクセサリーも、2人に1人当たる!って言うのが売りのおみくじ屋でも当たったことがなかった。
今回もきっとそうだ、、産卵期なんてそうそうあるもんじゃない筈。
俺はきっと不幸の星のもとに生まれてきた男なんだ。
マリーを助け出せたとしても、俺が幸せにできるのかな、、なんて事を、俺は助け出せてもいないこの状況で考え始める程、現実をまた逃避し始めていた。
「ギィィィィィイッ!!!!」
上のテーブルの方でやたら大きな鳴き声が聞こえる。
周りのドラゴンもさっきよりも騒がしい。
そっと様子を伺ってみると、横穴から蛇が数体入り込んで来ていた。
外のドラゴンが本格的に押され始めたのだろう。
中にいるドラゴンは必死で対抗している様だけど、産卵直後の疲弊した雌ばかりが残っているのか、蛇を仕留める事ができない様だ。
まぁ、俺はすぐに(ドラゴンに)仕留められたけど、、ね。
上でドラゴンに蛇が絡みつく。
噛みつかれた部分から徐々にドラゴンの体が石化していく。
苦しそうにしながらも必死で卵を守ろうとするドラゴン。
“「ヒマリは、、、母さんが守るからね、、。」”
俺にはなんだかその光景が、人間の親が子供を守る姿と同じに見えた。
ううっっ、、ああもう、どうにでもなれ!
運良く腰に残っていたナイフを抜き取って、柱を駆け上がっていく。
そしてそのまま、ドラゴンの首に噛みつこうと口を開いた蛇の脳天目掛けて俺はナイフを突き刺した。
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