第28話 悪夢の始まり
「よし、こんなもんかな。」
夢中になってキノコやら草やらを抜き始めて数時間、そこそこ大きな袋もついに中身が入りきらないほど満帆になった。
なんだろう、、スライムが居ないだけでこんなにも楽に早く集められるなんて、、。
ふふ、ふふふふふふふふ。
ヤバイ、、ニヤケが止まらない。
今はスッカラカンの財布を握りしめて、これにこれからたまるであろう金を想像しては、俺は1人ニヤニヤとしていた。
少しだけ、カゲルがそんな俺を見て引いてるような気もするけど。
「よっこらせっと、、。よし、じゃあ行こうか!」
俺はパンパンになった袋の口をなんとか閉めて、さらに持ってきたロープで縛って背負う。
やっぱりちょっとつめすぎたかな、、。
昔から畑へ収穫に行くときに使っていたやつだけど、身体が小さくなった分余計に重く感じる。
本当はこのまま帰っても良いんだけど、魔物もいないし折角だから次来た時のために下見をしておきたい。
できれば来るたびに使えるような、拠点になりそうな場所なんかもあると嬉しいなと思っている。
今は昼過ぎでまだ外も明るいし、良い場所が見つかれば少し早めに(明日の朝にでも)町に戻り始めても良いかもしれない。
そんなつもりで、俺はさらに森の奥へと入っていった。
……それにしても、本当に何にもいないな、、。
流石に魔物や動物すらいない森を不審に思い始めた頃にはもう日は傾き始めていた。
植物は所かしこにに生えて入るものの、それを餌にしているであろう動物すらいない。
取り敢えず奥へ奥へと真っ直ぐ歩き続けていたけど、さして森の雰囲気も変わらない。
たまに小川や池なんかが見えたけど、綺麗な水が流れてるだけで、そこにも魚1匹見なかった。
いくら考えた所で理由が分かるはずもなく、まぁ、こんなもんか、運が良かったんだろうと、少し大き目の木の影に荷物を下ろした。
「カゲル、水飲むか?」
途中の小川で汲んだ水が入った水筒を取り出して、中身をカゲルの口に流し込む。
ついでに泥が跳ねたカゲルの身体にも水をかけた。
俺に向かって、身体を振って水を飛ばすカゲルから逃げている時に、ふと、葉の影から見えた空に、ここには似つかわしくない物が目に入った。
葉に隠れてよくは見えないけど、土色をした背の高い塔?みたいに見える。
「なんだあれ?」
「ワン。」
明日にしようかと思ったけど、気になる物は仕方ない。
少し見て帰ってこれば良いしな、、と言う気持ちで俺はその塔に向かう事にした。
「うわぁ、、な、なんだあれ、、、。」
塔は思いの外高さがあったみたいで、距離感が狂って目標にしているその塔にはなかなかたどり着かなかった。
日が完全に沈んだ頃、ようやく俺はその塔の全貌を見る事ができた。
その巨大な岩肌剥き出しの塔は人工物ではなさそうで、所々に穴が開いている。
まるで大きな蟻塚のようだ。
塔を避けるように、塔から半径五十m程は木や草が生えておらず塔と同じ岩肌が剥き出しで、塔自体、森の中に突然現れた異物感が半端ない。
「ヴヴゥ、ヴヴゥー。」
森の途切れる1番端の茂みからその塔を観察していると、カゲルが塔をみて唸り出した。
でもなんだかいつもと様子が違う。
いつもなら尻尾を逆立てて威嚇しているカゲルが、今日は怯えるように身を小さくして唸っていた。
「カゲルどうしたんだ?魔物がいるのか?」
俺が聞いてもカゲルは変わらず塔をみて唸り続ける。
なんだか、、今更ながら嫌な予感がしなくも、、ない。
取り敢えず怯えるカゲルを抱き寄せて頭を優しくなぜる。
「大丈夫大丈夫。もし、危ない事が起きたら俺は大丈夫だから、お前は逃げるんだぞ。無理だと思ったら俺をほって部屋に入ること。それから俺が合図するまで出て来ちゃダメだからな、、。」
部屋とはアマカゲルが作り出していたあの異次元空間の事だ。
今は俺が勝手にそう呼んでるんだけど、、。
半年ほど前に、カゲルもそこに行き来出来ることを知った。
今はカゲルがようやく通れるぐらいの亀裂しか入らないから俺は入れないけど(と言っても、二度と入りたくはないけど)、いざとなったらカゲルはここに逃げ込む事が出来る。
まぁ俺は死なないので、カゲルが走って避けきれないような範囲魔法が降ってきた時なんかに一応使う感じになっている、、。
今のカゲルだからだろうか?、、この部屋(異次元空間)、場所から場所への移動できないようで、カゲルは亀裂(入り口)を作った場所にしか出てくるとこが出来ない。
だから、亀裂を作った場所や物が壊れると出てくるのに物凄い魔力を使ってしまうらしく、カゲルは数日動けなくなる。
それに、これを知っている敵なんかには、出る所を狙われたら終わりなのが、悪い点でもある。
まぁ、そんな事は滅多に起きないと思ってはいるんだけど。
ここはやっぱり、カゲルを見ても、、一旦引いた方が良さそうかな?
一瞬カゲルを残して自分だけ入ってみようか、、とも思ったけど、やっぱりそれはダメだと思いとどまった。
何があるのかを確かめておきたい気持ちはあるけど、それでカゲルを危険な目に合わせる事になっては意味がない。
日の沈んだ反対側から少しづつ、いつもより大きく感じる月が上がってくる。
「カゲル、、ここはもう戻ろうか、、。」
そう言って、俺が隠れていた茂みから出た時だった。
ーーパキリッ。
「えっ?」
完全に俺はカゲルに、カゲルはあの蟻塚みたいな塔に気を取られていた。
茂みから出た俺の目の前には、月明かりに照らされた3m程の赤く巨大な、鳥の様なドラゴンの様な魔物が牙を剥き出しにして俺を見ていた。
ーーー
此処からが妙に話が長く、もったりと進んでいきます。
読んでてイライラしたらすみません。
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