ねぇ、俺、可哀想すぎない?〜それでも回復能力の行き過ぎた俺は魔王でも倒せない〜

第一章 死亡と再生

 ここは、、どこだ?


 身体中のズキズキとした痛みで徐々に覚醒した頭が、俺の意識を少しずつ浮上させる。


 く、暗い、、のか?

 正直なんと言っていいか分からない。

 あたりは暗いと言うか、赤いと言うか、青いと言うか、そんな空間で地面すらない。

 ぼやける視界の遠くで、赤い稲光が絶え間なくピカピカ光るのがなんとなく見える。

 その光おかげて、自分の体が照らされているのが分かった、その程度だ。


 俺は、なんとか生きてる、、のか?

 このよく分からない絶望的な状況の中でそんな事に安堵しても意味なんてないのかもしれない。

 それでも生にすがる本能か、あたりを見回そうと少しだけ眼球を動かして視界をずらす。


 あ、あいつは、、。

 逸らした視界の隅で、真っ黒い毛並みに真紅の瞳、それと同じ赤い雷を纏った10メートル程ある巨大な狼が興味もなさそうに俺を見ていた。

 俺をここに連れてきたであろう、禍々しい気配を放っている獣は、気怠そうにアオーンと一鳴きして消えていった。






 身体が怠い、動かない、痛い、、。



 ……あれからどれぐらいの時間が経ったんだろう。


 永遠に終わりのない場所で、俺はただひたすらに自分が終わる、、死ぬ時を待っていた。

 そう、ただひたすらに、この苦しみからの終わりが欲しくて。



 このよく分からない空間に閉じ込められてから、感覚では分からないほどの時が過ぎたーー様に思う。

 実際に朝も昼も夜もないここでは仕方がないんだけど。

 気を失っていた、、もしかしたら死んでたんじゃないだろうか?と思えるほどの感覚だった。


 目を開けば歪んだ空間に視神経がやられて、吐き気がやってくる。

 そして全身を砕かれるような体の痛みに、目を向ければ、この異常な時間軸の影響か、いきなり体が幼少期程まで縮んだり、シワシワの老人の様に変化したりしていた。

 最初はそのショッキングな光景だけで気を失っていたが、二十回程その光景を見たあたりから何も感じなくなった。

 それでも痛みや、目眩が消えることはなく、やがて全身のくるった神経がちぎれた様に何も見えなって、何も感じなくなる。

 そしてまた、気づけば痛みで目がさめる。


 そんな時を、俺は只々繰り返していた。



 今回もまた痛みで目が覚めた。

 今は特に足が痛い。

 また見るも無残な事になっているのだろう。

 痛みで起きてる事がしんどい。

 目を瞑っても揺れる様な感覚が来て吐き気は遅からず来ることが分かっていたから、それならば早く気を失って楽になれる様にと目を開けた。


 あー、早く気を失えないかなぁ。

 気持ち悪いなぁ……。


 そういえば、マリーは今頃どうしてるだろう、、、。

 あの時、最後に告白しとけば良かった。

 もしかしたら振られていたかもしれない。でも、もしかしたら受け入れてくれたかもしれない。

 こんな後悔するなら、あの時当たって砕けとくべきだった。

 心残りなんて、虚しいな。


 ……ってあれ?

 そう言えば、今回は中々気絶しないぞ。

 と言うか、体も痛く、、、ない。

 はっ!もしかして、俺死んだのか?

 だからこんなにも身体が急に楽になってるのか?


 そうか、俺はついに死んだのか、、。

 マリーの事を考えながら死ねたんだ。

 心残りは別として、もう十分じゃないか!


 さぁ、天使とやら、。

 少し早目の人生だったけど、死んだらいけるって聞いた天国とやらに、早速連れて行ってくれ!


 晴れ晴れとした気持ちで、母さんから聞いた天使の迎えとやらを俺は待った。

 が、それは一向に来ない。

 閉じた目を開けてみると、いつもと変わらない、気持ちの悪いどんよりとした空間が広がっていた。


 あっれ?どう言う事だ?

 俺は……死んだんじゃないのか?



 気怠さと痛みで動かす事を諦めていた四肢に力を入れる。

 なんとなく怠いけど、今までの感覚と変わりなく動いた。


 思いのほかヤバかったのが服で、立ち上がった瞬間にお気に入りのツナギが呆気なくビリビリと紙のように破れて、俺の未使用のシンボルがこじんまりと、その存在を主張していた。


「えっ、って、ぎょぁぁぁぁぁあ!って、、ん?」


 誰もいない中、反射的に股間を両手で抑えて前屈みになった時、視界の中央に金色の文字が浮かび上がってきた。



“一万年の時間経過、及び同等のスキル使用負荷(死亡を含む)により、スキルがスキル上限を突破し、神域に至りました。現時点をもって、スキル:自己回復(小)がスキル:瞬間自己再生(極)へとスキルアップします。”


 へ?と思う間も無く、身体が弾け飛ぶ様な衝撃が俺を襲った。



ーーー

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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物語が完結するまで、ご縁がありましたらぜひお付き合いいただけると幸いです!



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