おまけ・ピアスについて



「どう? フィー。似合う?」


「似合うというか……似てはいても前のものと違うから、なんだか違和感があるな」



 渡したピアスを着けたルカが問うてきたのにそう返すと、ルカは苦笑した。



「それは仕方ないよ。あれは一点ものだったから、まったく同じものはこの世に無いし」


「一点もの? オーダーメイドということか?」


「そこまできちんとしたものでもないんだけど……。俺がピアスをしてるのは祖国の風習だって言ったと思うけど、成人の時に占師に各々に合った石を選んでもらって、それを加工してもらって作るんだ。その加工も祖国の細工師だけができるやつで……」



 つまり、特別な細工の代物だったということだろうか。ということは――。



「……それなら、意匠が似ているというだけで、安易に贈るべきではなかったな……」



 物自体が特別な代物だと思わなかったので贈ってしまったが、今からでも返してもらうべきかもしれない。

 そう考えたのが伝わったのか、ルカが慌てた様子で首を振る。



「いや、俺は嬉しかったよ! フィーが選んでくれたってだけで特別だし!」


「だが……」


「……それに、祖国の職人も散り散りになったから、同じ細工ものを探すのは難しいし。だから、これでいいんだ」



 「あ、『これでいい』っていうのは消極的な意味じゃなくて、フィーに選んでもらったんだからむしろ『これがいい』んだけど!」と勢い込んで言い募るルカに、自然と笑みが漏れた。



「お前がそれでいいというのなら、いい」


「返せって言われても、返さないよ?」


「言わない。……さっきはああ言ったが、似合っている」



 そう言うと、ルカは満面の笑みを浮かべた。

 本当に嬉しそうな笑顔に、こちらまで嬉しくなってくる。



「フィーが選んでくれたんだから、当然!」


「そこでお前が誇らしげにするのはなんだか違う気がするが」


「細かいこと気にしない。……本当にありがとう、フィー。本音を言うと、自分じゃ選べなかっただろうから、有難いよ」



 それは感傷からか、それとも。

 あえて深く訊ねることはせず、当り障りのない言葉を返す。



「贈りたくて贈っただけだが、役に立ったならよかった」


「すごく助かったよ。ありがとう」



 そのあとは、「何かお礼をしたいな」と言い出したルカを、お礼として贈ったものだから堂々巡りになると説得するのに少し時間を費やしたが、概ね和やかに過ごしたのだった。

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