カルテット

通行人B

⚫︎プロローグ

ファンファーレ

 舞台袖、ステージから漏れる明りと歓声。緊張で速くなっていく鼓動が、バクバクとうるさい音を立てている。


 「ふふ」


 「何笑ってんの〜、こんな大事な時に」


 「ごめん、みんなで此処、来れると思ってなかったから。」


  「嬉しくて」と言ってほおいた少女は、恥ずかしそうに、そして、嬉しそうにまた笑った。それに釣られて、他の3人も笑みをこぼす。


 思い返せば、今となっては、笑ってしまうようなことばかり。此処までの道のりが長過ぎることには、とっくの昔に気付いていた。不器用ばかりな4人組。綺麗にまとまるなんてできっこない。それでも此処が心地いい。そう思わせる何かがあった。


 「さあ、行きますか!」


 その声を合図に、彼女達は、まばゆい光と声の中に飛び込んでいった。




 





 自分の傷に見て見ぬ振りをして、ツギハギだらけの心をつくろっていた。

 なりたい自分にはなれず、ただただ理想を描いていた。

 本当の自分が分からずに、届かない声をつづっていた。

 自分の姿だけが見えずに、ファインダー越しの世界を見つめていた。


 


 ここは想ヶ丘高等学校。自分の持つ異能力を最大限に活かして、作品を作り上げる『次世代型クリエイター』を育成する学校。そんな学校に通う彼女達の、歪な青春物語。

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