掴めた奇跡 [480文字]

 思えばおかしなヒロインだった。


 勇者に守られていればいいのに自ら前線に立ったりして。

 なんなら勇者よりも強かったりして。


 聖女として選ばれたと聞いていたが、回復よりも敵をぶちのめす方が性に合っていると笑って。



 そんな人だから、勇者より先に逝ってしまうのだ。




 それから何度も何度も彼女を探した。


 何度目かの人生で、遠くの地で活躍する彼女の噂を聞いた。

 何度目かの人生で、彼女が救世主になるのを見た。

 何度目かの人生で、テレビに映る彼女を見た。

 何度目かの人生で、彼女は俺の母だった。

 何度目かの人生で、彼女は俺の姉だった。




 今。


 もう何度、人として生きたかしれない。


 やっと、やっと彼女に、近いけれど近くない距離で、出会ったのだ。


 現世の彼女は、俺の幼馴染。

 産まれた時から今までの思い出は、二人並んでアルバムに綴じられている。


 記憶を持つのは俺だけだけれど、そんな些細なことはどうだっていいんだ。


 ようやく。

 ようやく彼女と結ばれる。


 結婚式。

 純白のドレスに美しい彼女。

 ヴェールを上げて誓いのキスをする俺に、彼女は悪戯っぽく微笑んで呟いた。



「ようやく結ばれましたね、魔王様」



 ああ、彼女には敵わない。




お題:現世・アルバム・おかしなヒロイン

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