僕の好きなもの [370文字]

「ジャム、作ったから食べて」



 そう言って彼女は今日も図書室へやってきた。


 初めは橙色したマーマレード。

 蓋を開けたら少し焦がしたのだろうなと分かる匂いがしたっけ。


 次は赤色イチゴジャム。

 砂糖を加減しすぎたのか、かなり甘さ控えめだった。


 今日は何かと紙袋を開けると、中から香るブルーベリー。



「あ、ブルーベリー、一番好きなジャム」


「知ってる。だからなかなか渡せなかったの」



 あぁ、可愛いな。


 図書室でジャムの瓶は開けられなかったから、代わりに彼女の唇の横に付いていた紫色を、ぺろりと、舐めた。



「うん、最高に美味しいね」



 彼女は真っ赤な顔して口をぱくぱくさせて、僕を睨み付ける。


 そんなふうに睨んだって、可愛いだけなのに。


 その唇に、その手に、その首筋に、その身体にジャムを塗り付けて、何もかもを味わい尽くしたいだなんて言ったら、もっと可愛い顔を、見せてくれるかな?






お題:橙色・ブルーベリー・図書室

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