失われた過去、偽りの流れ [193文字]

 何故か足の向いた神社。

 鞠をつく場違いなほど豪華な朱に金の刺繍が美しい着物を着た少女がこちらを見つめた。


「雨が降るわ」


 その言葉に応えるように、ポツリと一滴の雫が頬に当たった。


「あなたの居るべきはこの流れではない。この雨に乗って、あなたは真の流れに引き戻される」


 汗が頬を伝う。

 いや、これはきっと雨。

 

 手のひらに蘇る、縄の感触。


 知らない。


 脳裏をよぎる、苦悶の表情。


 知らない。


「もう、逃げられない」




お題:鞠・雨・真の流れ

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