2/14、最後のキス [228文字] ※百合

「チョコ、忘れちゃった」


 私の言葉を聞いて、彼女は読んでいた本から目を離す。

 風船みたいに口が膨らんで、子供みたいに拗ねる彼女が酷く可愛らしい。


「ウソよ」


 そう言って私は私の口にチョコレートを一粒放り込み、彼女にキスをした。


 ころり。


 チョコレートが私から彼女の咥内へと移動する。


 とろけるような笑顔でチョコレートを食べた彼女は、口の端からつぅと血を垂らし、絶命した。


「美味しかったでしょう、私の、チョコレート」


 他の女に目移りした彼女を、私はどうしても、許せなかった。




お題:本・赤・風船・バレンタイン・キス・百合

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