第二十五話 水曜日 昼の刻・弐 〜宿題の結果

 お昼休み終了の放送がなり、橘はもどってきたわけだけど、動きがぎこちない。

 むしろ、ロボットのよう……


「た、橘……?」


 ぼくが声をかえるけど、聞こえているのか聞こえてないのか。

 キビキビと机を戻し、授業へ備えるようだ。


 すぐに数学の時間となる。

 なんとか宿題は提出できた。

 これには冴鬼もぼくも満足顔。

 ただ、授業の方は……


「凌よ、この方程式、つかえるのか?」


 教科書に指さす冴鬼だが、おしい! 実におしい!!


「それよりも、こっちのほうがいいんだよ」

「おお、これか……またややこしい算術……」


 そういいながらも、冴鬼なりに考えをまとめている。

 ……え、ぼくより頭いいの!? ぼくもそんなによくないけど!


 様子見しつつの数学の授業は、昨日と比べてスムーズだ。

 勉強の意味もわかってきたかな。

 でも、冴鬼のいってたこともわかる。


 ぼくは『今』苦労するから勉強をしてる。

 だけど、将来、この勉強が、方程式がなんの役にたつのかしらない。

 でも、この方程式がわからないと、ぼくは『いい子』にはなれない。

 高校にいくために『いい子』であるのが大切になるから、よけいにがんばらなくちゃいけない。

 でも、この『いい子』だって、いつまでつづければいいんだろう……


「おい、土方、ここの問題とけるか?」

「は、はい……」



 ───数学をこなし、英語の授業にはいるけど、衝撃事実!!


 なんと! 冴鬼の書き写していた範囲がちがうっ!!


「やばい」

「別に範囲をまちがえただけだろ」

「津宮先生、めっちゃ怒るよ、絶対」

「わしがこれだけ書いたのに場所がちがうだけで怒るのか? 心の狭いやつだな」

「冴鬼の気持ちもわかるけど、めっちゃくちゃ怒られるから覚悟したほうがいいよ」


 宿題の日は、最初の15分、宿題の確認に時間をとる。

 その間に小テストもあるんだけどね……


 冴鬼のテストまではぼくも面倒がみれないから、これは申し訳ない!

 でも今日の小テストは冴鬼が書き写してたところかも。

 1問でも単語が書けたらいいんだけど……


 きっちり15分がはかられ、アラームが鳴る。

 ぼくらはその音にあわせてペンをおき、今度は宿題ノートの返却タイムだ。

 でも、よく考えると、20名分のノートを15分で確認だなんて、すごいことだよね。


 席の並びに呼ばれていく。

 ぼくと冴鬼の列はちょうど真ん中だ。

 次々に呼ばれていくけど、特にみんな問題はないよう。

 ぼくの列になり、ひとり、ふたり……ついにぼく。するりと返されいそいそと戻るけど、次は冴鬼だ。


「上手に書けておるだろ?」


 自信満々の冴鬼だけど……


「安倍、なにをいってる。範囲がちがうだろ! ちゃんと授業を聞いていたのか!? お前は居残り! 今日の宿題範囲を提出してから帰れ!」


 ……これはマズい。


 つい橘と目が合う。

 そう、司令室図書室への集合が遅れることに……!


 授業を受けつつ、ぼくは冴鬼の宿題をどう早く終わらせたらいいのか頭をフル回転させる。

 ただぼくらが書き写すのを手伝ったところで丸わかりだし……


 今日で、呪いをとくんだろ、冴鬼……!


 心のなかで叫んでしまう。

 絶対、届かないけど。 

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