第11話 崇高なる計画(ケランザ伯爵視点)

ケランザ伯爵は経済大臣を務める程の人物だ。だが、彼の欲望ははかり知れず、もう一人の伯爵であり交通大臣でもあるバルバラ伯爵には並々ならぬコンプレックスも抱えている。


彼の娘が第三王子と婚約したと聞いたとき、自分の娘は何がなんでも第四王子に嫁がせようと躍起になった。娘は16歳で年も釣り合いがとれるし、何より本人もやる気だ。

第四王子は王妃に似た金髪緑眼に甘い顔立ちでご令嬢方にはすこぶる人気で学園でも随分と騒がれていたようだ。


必ず殿下の気持ちを射止めてみせると意気込んでいたが、肝心の第四王子が学園を卒業してからさっぱり表舞台から姿を消してしまった。

流石に成人の儀だけは公にしていたが、それ以外はどこで何をしているのか全くわからない。


方々に間者を放って情報を集めていれば1つ不思議な話を聞いた。

第四王子が平民の娘に恋したため国王に結婚をねだったのだという。しかもその平民はしがない傭兵の隊長の娘らしい。


傭兵など、国庫を食い潰すしか能のないごく潰しだ。戦争のない今、わざわざ手元に置かずとも解散させてしまえばいいものを国王から温情を与えられ名前を変えただけの金食いだ。ろくに仕事をしないくせに、給金をあげろと文句は言うわ、経費をギリギリ削って数を減らしてもいつの間にか増えている頭痛の種でもある。


むしろ憎しみさえ抱いている相手の娘と第四王子の接点がどこかといえば、これも予算計上で揉めることの多い王都の学園だった。

もともと王侯貴族しか通えない場所を王命により国庫から特別予算を組んで平民も入試の条件を満たせば通えるようにしたのだ。しかも奨学金をつけて無料で格安にしている。


常日頃から平民ごときに教育など必要ないと考えているケランザ伯爵は苦々しい気持ちでいっぱいになった。

あっさりと傭兵の娘を亡き者にしようと計画を立てる。


そもそも平民が王子の妃におさまろうなど思い上がりも甚だしい。平民にたぶらかされた王子も可哀想だ。なんとしてでもお救いせねば、と闘志を燃やす。


「ネズミどもが今朝出発したが、首尾のほうはどうだ」

「もちろん、順調でございますよ。明日には素晴らしい報告が届きますからお楽しみ下さい」


控えていた執事に、ケランザ伯爵は鷹揚に頷いた。全て上手くいくのは明日だ。そんな明日が待ち遠しかった。

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