わた☆ゆう~さえないOLである私のもとに勇者の方がやってきた!?~
金国佐門
ぷろろーぐ
第1話「目の前に奴はいた(前編)」
私の名は
私のジョブを簡単に説明するならば、しがないサラリーマンだとかOLだとか、まぁ平たく言うならば
――私は今、そんな“
……わかってるよ? 光年は距離ではない。時間だ。知ってるよ?
でもね。そういったツッコミはいいんだ。
ぜひともその理由を聞いてほしい。だってそれくらい今、私の脳内が大絶賛爆裂錯乱中なのだから。
数十メートル先で轟音と共に何かが爆ぜる。
あの場所は確か、シーソーがあったっけなぁ。
そう、ここは公園だ。普通の公園だ。そのはずなんだ……。
星々がほとんど煌かない、都会じゃないけど空気の汚れた地方都市の団地前公園。
それが今、私の立っている場所だった。
空には半月をやや過ぎた程度の、満月とはちょっと遠い程度の月。
そう、夜だね。
私は眼前の光景に呆然とするしかなかった。
散乱した木片とゆらめく砂煙。
中から現れたのはなんと、眩い白銀の鎧に身を包んだ金髪の青年。
彼はその手に持っている“なんかものすっごい豪華で装飾過多な美しすぎる剣”をひるがえし、目の前にそびえ立つなんか……眼の沢山ついたヌラヌラ蠢くコールタール状のものっそい気持ち悪い不気味で巨大な怪物へと向けて疾走して行くのだった。
そう、私はそんな現実離れした光景を、ただ呆然と眺めていた。
――てか、それしかできなかった。
轟音をたてながら砕け散るベンチだったもの。
その前にはブルンブルンと無数の触手を振り回すグロテスクな怪物の姿。
そんなものすっごい勢いで、ものすっごい威力であろう、ものすっごい速さの攻撃を、モーションブラーな残像を残しつつ余裕で回避する“なんかもう勇者としか形容できない謎の
まさに高レベル、異次元の戦い。
できればそんな素敵素晴らしい光景は、ぜひともブラウン管の中で、というかブラウザの中とか銀幕の中とかでやっていただきたかった……!
「――なんぞこれ?」
ここはとある県にあるしがない地方都市。
そのホームタウンである地区たる団地。
とどのつまりは、灰色のコンクリート
そう、私の目の前にあるのはファンタジーな世界でもなんでもない。
――現実なのだ!
異世界転移とかでは断じてない。
だっていつも部長に嫌味言われた後とかに心の癒しとしてお汁粉とかコンポタとか夏ならビールとかストゼロ様とか、そんなんキメキメするベンチが、今でも目に見える範囲に残っている。
砕けたの別のベンチでよかった。
いや違う、そうじゃない。
――そうじゃない!
なんなんだこの目の前のトンチキな光景は!?
言っておくが私は誰がなんと言おうと普通の一般人。
つまりは
秘められた謎の力がどうだとか? 実は勇者だか魔王だか天使だか悪魔だかの血を引く何かだとか? 親が実は宇宙から来た皇族だとか? 転生だの転移だのチートだの聖女だの悪役令嬢だの? そんなありきたりな昭和アニメ設定みたいな不可思議な謎パゥアーだの、昨今のクソテンプレ作品のようなクソご都合主義なんざ一切無ぇ! ありえねぇ! 持ってるはずとかありえねぇ! レーザーディスクは何者だ? そんな物はファンタジーなフィクション以外ではまったく無縁な普通系女子。ザ・無力なノーマル
そんなクソショボナメクジ野郎のジョブと言やぁそりゃあもう、悲しき
そう今私が立っている世界を例えるならあれだ、パラディンだとかナイトだとかウィザードだとかクレリックだとか何かやたらと裏切りそうな竜騎士(07)だとかが黄色いダチョウに跨り「フォロミー」と草原を駆けずり回るほどの
――何を言ってるかさっぱりわからないって?
はっはっは奇遇だね私もだ。
なぜなら当然の如く私は今この通り理解不能な謎珍文を大量に脳内で垂れ流しまくるほどに、脳が絶賛音速で駆け巡りながらもバグって宇宙広し猫ヒロシと現実逃避の真っ最中な訳だからして――
あぁお汁粉が美味しい身に染みる……。
股間も染みてる……。
大人なのに。
涙目。
私は手に持ったお汁粉缶をチビチビとキメつつ、ついでに大絶賛ドバーッとチビりつつ、夢見心地放心状態で目の前のクソ現実を受け入れようとしている真っ最中なのであった。
こんな一般成人女子のお漏らしシーンとか誰得なんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます