僕とパパと侵略者たち
冨井春義
僕の日記
第1話 7月13日
今日、僕は10歳になりました。
誕生日のお祝いにパパからもらったパソコンでこの日記を書くことにしました。
僕の名前は、エスミ ヒサヒコ。パパの名前はエスミ ハルヒコです。
僕は生まれてからずっと、この山の中の村にパパとふたりで住んでいます。
僕たちの住んでいる村は、古くから林業で栄えた村でした。
僕が生まれる前にはたくさんの人たちが平和に暮らしていたそうです。
でも僕が生まれた年に、あの恐ろしいプールクランが地球に攻めて来たのです。
プールクランは世界中の空に大きな宇宙船を浮かべて、建物を破壊し、たくさんの地球人を殺しました。
この日本にもプールクランがやってきて、ほとんどの日本人は死にました。
パパはまだ赤ちゃんだった僕を抱いて、山の中を逃げ回ったそうです。
村の人たちはほとんどが殺され、また何人かの人たちはプールクランの宇宙船にさらわれてしまいました。
僕のママもそのときに殺されました。
だから僕はママの顔は写真でしか知りません。
病院で、まだ生まれたばかりの僕を抱っこしているうれしそうなママの写真です。
ママはとてもきれいな人です。
今、この村には僕たちの他には誰も住んでいません。
家はまだたくさん残っていますが、ぜんぶ空き家になっています。
僕とパパは誰も居なくなったこの村で、プールクランに見つからないように隠れて暮らしています。
僕はママや村の人たちを殺したプールクランがとても憎いです。
パパはいつも言ってます。
「この地球にはまだ人類が生き残っているはずだ。パパはその人たちと連絡を取り合い協力して、いつかプールクランから地球をとり戻す」
でも僕はまだ生き残っている人間に出会ったことがありません。
ほんとうに僕とパパの他に、生き残っている人間がいるのでしょうか?
もしも僕とパパ以外の人がこの日記を読んでいるのなら、あなたは生き残った人間なのかもしれませんね。
僕の1日について書きます。
毎朝6時に起きて、お米を炊いて朝ごはんを食べます。
ご飯を食べたらすこし休んでから、パパと山に食べ物を探しに出かけます。
山には食べられる植物がたくさんあるので、毎日の食べ物にはあまり困りません。
秘密の地下室には缶詰やインスタント食品やいろいろな食べ物がありますが、これは隠れなければならないときの食べ物なので、できるだけ食べないようにしています。
川に魚釣りにも行きます。
今日もお魚がたくさん捕れたので、河原で焚火をしてお魚を焼いてお昼を食べました。
家に帰ってからは勉強の時間です。
昔は僕のような子供は小学校に行って勉強したのだそうですが、今は子供は僕しかいないので、パパが勉強を教えてくれます。
僕は小学校4年生の歳ですが、もう中学生の勉強をしています。パソコンもパパに習いました。
勉強が終わったらパパが夕ご飯を作っていっしょに食べます。
ご飯を食べたらお風呂を沸かしてパパとふたりで入ります。
パパはお風呂でいつも僕を抱きしめて「パパはヒサヒコが大好きだよ」と言います。
僕もパパが大好きなので、このお風呂の時間が大好きです。
お風呂から上がったら、パパとおふとんに入って寝ます。
寝る前にはパパが本を読んでくれます。今はドラえもんのマンガがとても好きです。
寝るときにはパパに抱きついて寝ます。
パパは「暑いから引っ付くなよ」と言いますが、押しのけたりはしません。
パパといっしょにおふとんに入っていると僕はとても幸せな気持ちになります。
だからもし、僕たちのほかに誰も人間がいないとしたら、僕はずっとこうやってパパといっしょにいたいです。
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