Chapter.04
「ワンワン!」
「あー、もう! どこだよ火元は!」
すると、そう遠くはない距離から、犬の鳴き声と男たちの声が聞こえてきた。
「えっ……誰か来る……」
『おや? あなたのお友だちですか?』
騒ぎの様子からして、山火事ではないかと通報を受けた消防団がやって来たのだろう。
「ううん、友だちじゃない」
二匹の宇宙ペンギンが見つかれば確実に捕獲され、解剖までされる可能性も決して低くはない。頭の中で、ホルマリン漬けにされた二匹の映像が鮮明に浮かぶ。
「大変……早く逃げなきゃ!」
『ペン?』
「ねえ! 燃料は、あとどれだけ必要なの!?」
めぐむの鬼気迫る雰囲気を察した二匹が、慌てふためいてヒレを激しく振り回す。
「ちょっと、落ち着いて!」
『あわわ……ダーリン!』
『ま、真っ直ぐ帰るんであれば、燃料はそこまでなくて大丈夫です!』
家まで取りに行く時間はもうない。めぐむは綿繊維の素材を探して背負っていたリュックの中を漁る。
「ない、ない、ない! ないよー、もう!」
必死になって探してみても、出てくる物は大学ノートに教科書、ペンケースに水筒、ピンク色の長財布とリップクリームにハンドクリーム、秘密の手帳にお菓子の袋など、綿とは無縁な物ばかり。
「そうだ、制服!」
急いで羽織るジャケットを脱いで洗濯表示マークを見てみる。ウール50%とポリエステル50%の混合素材だった。プリーツスカートも見てみたけれど、割合が違うだけの同じ生地で使えそうにない。
「ええっ……そんな……」
大勢のざわめく声が、どんどん近づいてくる。
(いったいどうすればいいの!?)
胃がキリキリと痛むのを感じながら、ふと、めぐむは視線を落とす。
自分を見上げる二匹がまるで、スカートの中をのぞいているようにも見えた。それは毎日、駅や学校の階段を
「──あった! えっ、でも……」
綿の素材が、しかも、純度100%の繊維があることを思い出したのだが、うら若き乙女として、それは手渡すにはとても勇気が必要な
それは、股間やお尻を覆い隠して守るための綿製品。
自分が穿いている
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