リザ襲来
ケケケケケ
見た事の無い化獣は、レイモンド
を見て太く濁った声で
《お前は、儂の物なのに・•・⚡》
⚡《何故、私を選ばぬのだ━━━‼》
地響きが怒り地が割れんばかりに
叫んだ⚡
レイモンドはグッタリとした美桜を
抱え
《化け物め‼💢━━━━消え失せろ‼》
と叫んだ。
レイモンドは美桜を丈夫な台の下に
隠したが美桜の軽さに唖然とする。
ああーなんという事だ美桜は片手で
軽々と抱えられる程、衰弱しく
なっていた。
お転婆で、イタズラし放題だった
愛らしい美桜は、無惨な姿に
変わっていた。
レイモンドの怒りは頂点まで
登り詰めた。
《ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!》
化け物め━━━━━━━━‼
美桜を又、安全な家具の後ろに隠し
レイモンドは、戦闘態勢になる。
剣を真っ直ぐ化け物に向かって
振り上げ駆けていく。
エミリアに対して憎しみが
膨れ上がり突進して行く!
《許さんっ‼》
エミリアの顔は益々不気味さを
現し、バカでかい八木の角が
頭の上から立ち上がる。
レイモンドの顔も怒りで青鬼の
様に変わった。
眉は釣り上がり目は刺すような
鋭さを放ち手に持った剣を振り回す。
ガキ━━━ン、キ━━━ンキン
耳が割れそうな金属音が響く!
「ブランズバルト国
王太子クロードである‼
屋敷は包囲した、静かに従え‼」
「マスカリッチ国、王太子
アルベルトであ━━━━る‼
海も我が国が包囲した‼
逃げ道は無い、降参されよ‼」
右と左から2人の王太子の声が
高らかに響く
しかし相手は魔物一族
切っても切ってもキリが無い‼
のたりのたりと下から下から
黒い兵士が現れる。
レイモンドも力尽きそうに
倒れ込んだ。
「クッソォ、美桜を守らなければ‼」
「レ、レイモンドが危ない。」
倒れ込んだレイモンドが美桜を
守ろうと美桜の前で盾になろうと
していた。
美桜は、最後の僅かな力を振り絞り
「月の光よ、今願いをかな・・えて」
そう弱々しい声で呟くと
美桜の体が光につつまれた
虹の橋がレイモンドへと伸びる
レインボーな光は、槍の様に飛んで
レイモンドを捕らえるとレイモンドからも太陽の光が飛び出しグルグルと虹の光と混ざり合い
目を晦ます様な光が屋敷中を駆け回る。
どこらそこらから
ギャ━━━━━━━━━ッ
と言う地響きにも似た叫び声が響
回る。
エミリアの狙いがレイモンドから
美桜に向いた。
黒光りの輝く1本の殺人剣を
女とは思え無い力で振り回し
美桜目掛けて真っ直ぐに走る。
美桜にちかずく度、体はドンドン
大きくなり巨体と化して行った。
美桜は、俺が守る‼⚡
レイモンドが全力で走ると太陽の剣が
レイモンドの中から飛び出し
美桜を狙って殺しに走る魔性の怪物
目掛けて飛んで行った。
光のドデカい剣に続き、光が集まり
化け物にシュンシュンと尖った音を
立てて飛んでいく!
何本も何本も光の矢は続いて飛ぶ。
《《ウギャャャガャギャ
━━━━━‼》》
金の光は、化け物に命中すると
ドス黒い煙となって
グルグルと
化け物を巻いていった。
エミリアと名乗った、魔女リザの
顔は、パパパと5回くらいに変わった。
最初は大蛇の様な鱗をつけた
5歳くらいの三角の少女の顔‼
2回目は其れが大きく見えて
獲物を見据えた様な鋭い目をした
ワニの顔‼
三回目は口が裂け、ヤギの様な尖った、角をひけらかし牙をむき出しにした中年の女の顔‼
4回目はあの優しいエミリアの顔‼
5回目は目が頭まで伸びて
口は耳迄裂けて赤い長い舌をピロピロと上下させ牙をむき出しにしながら、ヒャヒャヒャと笑う老婆の顔だった。
リザは、老婆の顔を見せながら
《レイモンド、愛してるわ━━━━》
ヒャヒャヒャヒャヒャ
黙れ━━━━━‼
レイモンドに握られた金の剣は、
真っ直ぐエミリアを狙い飛んでいく!
黒く鋭くレイモンドの目は釣り上がり口は白い歯をむき出しに見せるほど強く開き、まるで前世の記憶の恨みを重ねるように、前世シャロンと、現生美桜の苦しみと、自分自身ケインの記憶、その敵討ちを一つの剣が請け負う様に真っ直ぐに確実に化け物を捕らえ飛んで行った。
金色の剣は、化け物の胸に
グサリ
と、刺さった。
ウギャャャ━━━━━━アァアアア
赤く血走ったワニの目が更に
ドデカク開き
口からは真っ黒なドロリと
した血が吹き出した。
エミリアの悲鳴が上がると
建物のどこかしこから
ギエ━━━━━━━━エエエ
気持ち悪い悲鳴が飛び交っている。
エミリアのあの美貌も
エレガントな、身のこなしも
見事に消え失せ
今はただ醜さだけが支配していた。
以前の様な容子も見る影は無い‼
ギロリと、大きく血走る目を開き
尖った枝切り鋏の様な爪を
して、その手で剣を抜き取ろうと
していた。
金色の剣はリザに突き刺さると
後から後から光の矢が飛んで来た。
金の神々しく光る矢は
化け物の血で黒く錆びたようになり
エミリアの体に溶けていった。
化け物と化したエミリアの体は
細く伸びてバタン、バタンと、
大きく揺れながら高く飛び上がった。
最後に黒い髑髏になり
ボボ━━━━━オ━━━━━ウン
と、地響きに似た音をたてながら
真っ黒な塊になり空へと
再び登って行った。
登り詰めた赤い空で爆発音がなり
赤い1本の空に伸びる雲と一緒に
稲妻の様にビカビカと光る太い線に
なり真っ直ぐと急降下し地上へと
突き刺ささった。
ボフンと煙を上げたかと思うと
ポロポロポロポロと、錆びた粉に
なり飛び散った。
最後には土埃の様に吹いた突風が
どこかに跡形もなく撒き散らして
いった。
壮絶な戦いだった事を証明するように町は荒れ果て何処そこにカラスの
羽根が落ち、家々から煙が上がり
残骸が落ちていた。
街は酷い荒れようだった。
異様な程真っ赤な空は徐々に
時間をかけながら、青さを
取り戻して、行った。
土埃と、血が滲んだレイモンドの
体も手当をしなければならないのに
彼は美桜から離れずにいた。
街にも剣を取り戦った勇者がいた
今だ、と、立ち上がった人々が居た
が不思議なことに虹の光に覆われ
怪我人は、1人も出なかった。
話によると流れてきた虹の光は
クルクルと、一人一人を覆い
柔らかな光に包まれていたと
口々に言う、神のみぞ為せる技だと‼
軍隊と勇者と、化け物の戦いだった。
ルチアマンダ国の事は
クロードと、アルベルトに任せ
護衛として
軍隊長、騎士団長を付けた。
街は勝利の雄叫びが上がり
盛り上がっていた。
そんな勝利の祝福を受けながらも
レイモンドは、美桜を抱き抱え
涙していた。
やがて、着いたドクターヘリへと
美桜を抱いて飛び乗り
悲しい声で美桜、美桜と、叫んでいた。
待機していた医師と看護師は、
美桜の服をハサミで切り取り
現れた美桜の体に絶句した。
顔から首全身に至るまで、虐待の
あとが残っていた。
それにも増して痩せた体は
・・・言葉を失う程だった。
しかし一箇所、腹だけは無傷
全身打撲、頭蓋骨損傷、栄養障害
レイモンドは、泣き崩れた。
美桜の話を信じていれば
少しでも耳を傾けていたら・・・
美桜の必死の訴えすら受け付け
無かった。
レイモンドは美桜の回復を神に
祈った。
美桜が死んだら、俺も死ぬ
もう離れずに共にいよう。
永遠にお前と共に・・・!
そうだ、俺が美桜を見つける度
美桜は、居なくなる。
レイモンドは、美桜の手を握りしめ
美桜の悪臭を放つ髪にキスをした。
「美桜、そんなに眠いのか?
頑張ったんだな!
お前は強い、だからもう少し
俺の為に頑張ってくれよ。」
涙でグチャグチャになった顔を
近付けてレイモンドは、掠れそうな
声でささやいた。
看護師や医者もそんな2人を見て
涙した。
ルチアマンダ国は、虹の嵐で
一掃され、街にはカラスの黒い
長い羽根が所狭しと落ちていた。
誰の骨か分からない💀髑髏も
ゴロゴロ落ちていた。
しかし、ルチアマンダ国の住人は
カラス族と、髑髏族つまり
海賊、山賊、盗賊
の子孫達の成れの果てと、
知っていた。
昔、昔からこの国はデタラメで
捕まる者達は善人でこの3族に
たてついて平和を求める人々しか
いなかった。
上に立っ役人は全て悪人だった。
エリックも善人の一人で国を変え
ようと、努力している一人だった。
エリックと、仲間達は
捕まった善人を全て解放し
月の乙女が成敗した事を
世界中に宣言した。
言い伝え通り
月の乙女が空より降り立ち
身を糧にして国を変えた。
悪は滅びて夜が明けた。
空は青さを取り戻し
人々は神と、神の乙女に跪く。
しかしエリックは、手放しでは
喜べず犠牲となった乙女、美桜を
妻と、共に心配していた。
意識不明の重体が2週間続いたが
美桜は、目を覚まそうとしなかった
レイモンドは、付きっきりで
美桜の看病をした。
「眠ってるだけなのに
頬には、ほんのり肉がついてきたな、美桜は、ホントに食いしん坊
だ。」
美桜の髪を撫でながらレイモンドは、呟いた。
まだまだ、ガリガリの細い身体を
見つめながら自分の罪深さを
思い知る。
目を開けてくれ。
2回目の検査結果がでた‼
一回目と、ほぼ同じだが一つだけ
違っていた。
「初めは申し上げるか迷いまして
言わずにおりました。
他の医師も同じ気持ちでしたので
ご理解賜りますようお願い申し上げます。」
「いいから話してみよ!
何を言われても驚かぬ!
もう、覚悟は出来ておる。」
(-⊡ω⊡)+
「分かりました、美桜様は
ご解任されておられます。
三ヶ月ぐらいと思われます。
胎児様の大きさを測り多分
それくらいと思われます。
お見覚えは、あられますか?」
「あ・・・ある‼あるぞ‼」
あの日だ、美桜を探しに川へ行き
金色の鯉が美桜の所へと
案内してくれた。
「美桜によく似た娘か‼
答えよ!
ハッキリ申せ💦」
「双子であらせられます。
王子様か姫様か
或は王子様と、姫様やもしれませぬ。」
50過ぎの院長は、レイモンドの
いきり立った姿に困惑しながらも
答えた。
「それに・・・」
レイモンドも困惑していたが
その言葉に顔を上げた。
「それに?なんだ‼」
「美桜様もまだ生死の間を
さ迷われておいでです。
お子様も・・・弱られていて
流産の危険も御座います。
お腹に傷も打撲も無かったのは
奇跡ですが多分
御本人はお気付きで庇って
居られたのだと推測いたします。」
これだけ酷い目に合われながら
流産しない方が奇跡と、
思われます。
申し上げにくう御座いますが
お子様も美桜様も、殿下には
お覚悟されました方が宜しいかと
思われます。」
医師の話を聞いたレイモンドは、
ガクガクガクガクと、膝から
崩れ落ちレイモンドをそばに居た
医者達が支えた。
宮廷医師も呼ばれ、
美桜は、手厚く治療された。
レイモンドも殆ど寝て居なかった為
疲れとショックで身が持たなかった
のだろうと、診断された。
あの夜夢に出てきた美桜によく似た
女の子は・・お腹すいたと泣いて
いたのは自分の子供達だったのか?
何故気付いてやれなかった
何故エミリアを信じ美桜を信じて
やれなかった。
あんな化け物ならあの距離なんか
秒で行き来出来る‼
ひとっ飛びだったろう。
美桜も子供達も守れない・・・
情けない父親だ‼
子供達は、夢に出て来てまで
助けを求めたと言うのに・・・
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