殿下の待ち人

非常線にも、検問にも引っ掛かることなく小僧は逃げ延びた。

捕まらない!


椅子に座り頭の上で手を組み目を瞑り足を組み換えしながら椅子を揺らす。


“ふうーっ“

「もう一週間か‼」



ドタドタド┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣

¨バアアアーン



執務室のドアが乱暴に開く


ズカズカと入って来るなりバーン

と机を叩く男‼

やっぱり来たか分かってはいたが

ああ💦・・・面倒臭い。


「レイモンドなんだ‼あれは‼💢

ウワサも国中に広がってるぞ‼

ワナワナワナお前何を、考えてるんだ‼」


怒り心頭の俺の側近ヴァルタンは

ツーブロックの髪をきちんと

撫で上げ真面目が息をしているような男、生真面目過ぎてイケメンな顔も怒ると剣の刃のように俺に

向かって来るコエ﹏



「アハハハハまあまあ‼

目くじらたてんなよ。

だから生真面目君ってあだ名が

つくんだよ、なぁ、レイモンド


ヴァルタンよ、レイモンド殿下様と

言えど人の子なのだからなっ‼」


ヴァルタンの後ろからロベルトが

ミデアムに切ったピンクブラウン

のパーマがかかった髪をチリチリ

ねじりながら

壁にかかったデカい丸い鏡の前で

甘いマスクでクスクス笑い

ヤレヤレといった顔をする。


生真面目なヴァルタンとは正反対

甘いマスクをフル活用するロベルト

は今で言うチャラ男だ。


この2人は父王の大臣の息子で

幼少期より、俺の側近にすべく

兄弟のように育った。


遊びも学業も武道、剣の修行も

兄弟以上、友人以上の付き合いだ

思った事もズバツ ズバツと発言する。


性格は3人三様

剣の腕も引けをとらない。


「いいかぁヴァルタン‼

レイモンドは、林檎、梨、桃

苺にあきたんだよ。」


「ん?🍎、🍐、🍑、🍓?」


「そうそう。丸いのバッカ食べてたから、バナナも食べたくなったのサ‼

なあ、レイモンドケケケ」


「ん?バナナ?」


»»》💢

💢


「んな怒るなよ!」

ギロりと睨まれたロベルトは


「頭硬過ぎ﹏」

とビビりながらレイモンドに駆け寄った。


ヴァルタンは怒りモードでああだこうだギャンギャン説教をしだした。

耳が痛すぎる。


「いいか‼

耳の穴かっぽじいて よーく聞け

《ウワッ未だ続くのかヴァルタン説教‼》

ゲイとか、レズとか愛情の表現方法は人皆平等と思うぞ!

しかしそれは一般人の は、な、しだ‼


レイモンド‼

お前は国を背負う義務がある。

民が幸せに暮らせる様に働く

義務があるのだ‼


お前は世継ぎを作り育て、お世継ぎを立派な王へと成長させねばならん‼


今のお前はーっ💢

国を守り民を守る意思がかけては

おらぬのか?


お前のやるべき事は人探しでは無い‼

お相手探しだっ‼

まずは、そこからだ‼」

ハァハァハア

「で‼だ‼」


「見合いだってサ‼」

横からロベルトが丸い目を向けて

レイモンドにつぶやく。


トントントントン

ノックの音がした時はもう王の執事のアレンがレイモンドの母親

ミュウリアを伴って入って来た。


アレンは40歳になるがモテる。

七三に分けた短髪がサラーッと

おちる。

女なら迫られたら秒でおちるだろう。


黒いスーツを颯爽と着こなしたアレンの腕には何枚もの見合い写真が抱えられていた。


ミュウリアはアレンから一枚一枚

写真を受け取りレイモンドソックリ

な瞳で三人を見た。

栗色の髪を緩く結ぶと白い肌がより

強調される。


チラリとレイモンドを眺め

唇が綻んだ。


ロベルトとヴァルタンは胸に手を当て膝を伸ばし二人並び軽く頭を下げた。


「お母上様、今日ラルクリン国から

1ヶ月の視察を終え帰って

参りました。」

ヴァルタンが帰郷の挨拶をする。


「お母上様、お変わりなきようで

よろしゅう御座いました。」


ロベルトも王妃様に挨拶を交わす。


レイモンドの母親は国の母

よって2人も尊敬の意を込めて

幼少期より母上様と呼んでいた。


「お久しぶりですね。

お仕事ご苦労様でした

今日はゆるりとしておいきなさい。」


「ハッ ハッ」


「皆様、おいででございましたか!

ちょうどよろしゅう御座いました。

殿下のお相手を探しております。


皆様も御意見をお聞かせください。」

アレンはにこやかに笑いながら

キツい目をしていた。


最近嫁嫁うるさいと思ったら

遂に母上まで説得につれだしたか

・・・卑怯な‼」




レイモンドはチラチラ見られる事に

苛立ちを覚え・・・


「嫁は自分で探します。

余計なお世話ですよ。

御心配無用です、母上。」


焦るように口を開く。


ミュウリアは、ハァ➰💨

溜息を吐くと口を開いた。


「レイモンド、

あなたの好きな方と添わせて

上げたいのは母として充分

感じています。


だけど・・・

男の子はダメです。

分かるでしょう。」


レイモンドはヤッパリと言う顔をした。

アレンは母親が一緒だと俺が

見合いすると思って連れて来たか‼

そう思った。

これは・・・やられた。


「あ〜ハイハイ‼

分かりました。どうにでもされて

下さい。しかし

気に言った令嬢としか結婚しませんよ。」


ヴァルタンの説教に加えアレンの説教にまで付き合える訳もなく

そして母親の泣き落としが続くのは

目にみえていた。

全部苦手、面倒臭い‼

お手上げとばかりにレイモンドは

早々と白旗をあげた。


「御意」

アレンは胸に手を当て軽く頭を下げ

「王に、お伝えして参ります。」


と母親と意気揚々と出て行った。


「 ・・・ 」


「聞いたろう。ヴァルタン‼ロベルト

これで満足か‼」

椅子をグルグル回しながら呟いた



「ハァ〜小僧に会いたい。」

ポロリと本音が溢れる。

すかさず、ヴァルタンがジロリと

レイモンドを睨んだ。


「あーハイハイ

分かったよ!明日ナムールの村に

視察に行く、今日は早く寝るから

おまいら 帰れ、帰れ‼」


「知らぬと思うかレイモンド

少年を取り逃した村だろう。

まだ懲りずに、なんやかんや

用事を作って探しに行くのか?」

レイモンドはキツい口調で問い詰めた。



「は?そうなのか?

俺も行く、見てみたい。

レイモンドを惑わす少年かぁ〜」



「ん、んんん、断る

あくまでも視察だ‼


それに久々にマヤのカフェに寄りたい。あそこの紅茶は絶品なんだ」


レイモンドが慌てて言い訳をする。


「じゃあ、俺も行く!

俺もマヤの店のパンが好きなんだ

屋敷の者が買いに行くが

焼きたてが食べてみたい。

絶品だと聞いたぞ‼」

ヴァルタンは、あんなに不機嫌だった

のにマヤの店の話をしたらゴロリ

と態度が変わった。


余程マヤのの店のパンが好きらしい。


執事のマークがやって来て

「明日でございますが・・・

お車をだしますか?

馬車だと馬車道を通らなくては

なりません。

少し時間をとる事になりますゆえ

どういたしましょう。」


「う〜ん、そうだな‼」

レイモンドは少し腕を組み考えて


「ヨシ、馬車で行こう‼

ストレスも感じていたし森林浴

なんてどうだ?

それに早く視察から帰ったとして

見合い、見合い言われるのは

たまらん、 勘弁して欲しい

なあ、ヴァルタン‼。」



「だから・・それはな

《《あー分かった、分かった、それ以上言うな‼じゃあ明日AM10:00な‼

遅れるなよ‼》》」


ヴァルタンの言葉を断ち切り

時間を告げる。


「いや、ちょっと待て‼10時?

それは遅すぎるぞ!


8時だ、出発は早くしないと

ナムールの村までどれくらいと

思ってる?

早馬を出すのと訳が違うぞ!」


「えー、俺早起き苦手なんだよ。」

ロベルトは頭を掻きながら顔をしかめた。


「8時だ‼

ちゃんと起きろ護衛だと言うこと

忘れるな‼

寝坊するなよ!レイモンド、

ロベルト‼じゃ帰るぞ

明日早めに来るからな‼

ご機嫌うるわしゅう殿下‼」


ヴァルタンは胸に手を当て令をとり

ロベルトもヴァルタンにつつかれ

ながら部屋を出た。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る