第2話 此処は何処

景色に溶け込むように美桜は

動かず、ぶっ倒れたまま眠っていた。


朝五時からの練習、起きたのは朝4時

それに加え、暑さに体力が

落ちていたうえに、あの追われながら死にもの狂の猛ダッシュ

身体はもう限界だった。


どれくらい眠っていたのか?


目の前には15cm程のシロツメグサ

が生い茂り、クローバの緑の中

ポンポンとした丸い爪位の花が

馨しい香りを漂わせ一面に

咲いていた。


向日葵の花は姿が無く

白いモクモクとした雲もなく、

空には青空が広がっていた。


明らかに自分の生きて来た世界とは

違うと美桜は思った。


ガバッと起き上がり周りを見た。


此処は山の頂上のようで

あの地獄の様な暑さはなりを潜め

気持ちいい風が吹いてくる。


遠くの山を眺めれば天子山を

思わせる様な綺麗な山々が見えた。


下を見ればマチュピチュに似た、

棚田が広がり更に遠くを見れば

高層ビルが幾つも並ぶ都市がある。


美桜は、よく配信されている

動画の世界にトリップしたのだと

確信した。


此処は、まさに異世界

自分が生まれ育った世界とは

かけ離れている。


異様な美しさにしばらく

立ち尽くし、夕焼けが空を

染めているのに気づくと、

一人ボッチなのだと思い知らされた。


いやいやコレは、あの地獄の

様な暑さが見せる夢で、

自分は、熱中症でぶっ倒れて

夢みているのかも知れない。


真夏の、見せる夢・・・


にしても

此処にいても仕方がない!


街の灯りを頼り山を下りる事を

決意‼美桜は、薄暗い山道を強ばる

体に気を使いながら街を目指した。


1時間歩いた所で沢山の男達の声が

した。


10人、20人では無く、大人数

何事かと怖くなった美桜は咄嗟に木の陰の薮の中に身を隠した。


雄叫びがあがると、

馬の嘶きも泣き声高く上がり

ゾロゾロと黒い集団が

突撃している。黒い集団は髑髏マークのジャケットを全員着ていた。


容赦なく放たれた矢は、

家を焼き、人をねらい、怪我人が

バタバタと倒れていった。


美桜はガタガタと震えながら

カフェのおばちゃんの言葉が甦る。


「ルールに守られた試合しか、した事ないだろう。

喧嘩はお構い無しに攻めて来る、

気を抜かない事。」

お構い無し、お構い無しに・・・

攻めて・・・くる。

おばちゃんの言ってた喧嘩は・・

こんなに残酷‼



槍にたいまつを付け槍を放つ、

少しの戸惑いも無く次々と飛ばす。

逃げ惑う人達を見るしか出来ない、


助けようにも、初めて見る惨劇は

想像を超えて動け無い。

しかも言葉が分からない。

中国語、フランス語、違う英語でも無い‼

何語‼

聞いた事の無い言語‼



ふと見たら小さい子供が飛び出て

来た、男達は戸惑う事無く良い獲物を見るように銃をむける。

子供は何も分からずつつたっている。

ナッ!!


美桜は薮から飛び出した。

このまま見捨てては、大和撫小子の

名折れだ、


くるりと背を美桜に向けた男達は

薄笑いを浮かべ標的を変え

美桜を狙ってきた。


銃をゆっくり向けて来る

ムッさりと髭を生やし日焼けした

マッチョな腕、背の高いのもいれば

それ程高くない奴もいる。


\\"早くにげるのよー//

甲高い声で叫んだ

美桜の切羽詰まった声に驚き

その子は小さい足で走り出した。


子供が逃げたのを確認すると

美桜は覚悟を決めた。

人間、死と向かい合うと案外冷静に

なれるものだ。

ニヤニヤと笑う男達


美桜は静かに目を瞑った

.。oOあー、短すぎる人生だった。

運悪すぎ!!

しかし銃声は聞こえない変わりに


然しザワザワとした

人のすれ違う音に、

片目をゆっくり開けると

大勢の、男達は馬に乗って、

走り去る所だった。


見ると自〇隊の73式型トラックに

良く似た車が、何台も現れ

又騎馬隊の様な

集団がゾロゾロとく駆け上ってきた。


馬には防弾チョッキみたいな

分厚い布が掛けられ、

トラックには王冠と麦の

マークがあった。



1人の体格の良い男が

髑髏集団に向かい何か叫んだ、

その声に振り向いた男の頬には

頬から口にかけて深い傷跡があった。


目付きが鋭く睨み付ける様な

強い眼差しで

何かを大声で言い返すと

親指を下に向けて走り去って行った。


美桜は危機一髪で命をつないだ。

然し目の前には大勢の負傷者が

倒れていて話も通じない。


どうやらこの群衆は味方の様だ

怪我人を手当したり

担架で運んだり忙しくしている。


美桜は、一言も発せず、怪我人を

トラックへ運ぶ手伝いをした。

その手伝いが終わり、

怪我人を運び終えた頃にはもう

真夜中になっていた。


1人の兵士が何か言って来たが、

意味がわからない・・

頭を下げて、その場を去った。



腹も減ったしクタクタ。

空には最後の怪我人を運ぶ

ドクターヘリが風を巻き起こし、

大きなプロペラの音を響かせ

空へと登って行った。


後は、怪我人の良い回復を祈るのみ‼


この村は壊滅状態、誰も居なくなった。



また慣れない山道を家を探して歩く。


ふと顔を上げるとデカい敷地が

広がる、見るからに御屋敷があった。

階段を上がり門を抜け庭に入る。


玄関脇には、ミモザ、アカシア、

ライラック

家をグルりと回るとマグノリアの

紫や白い花、生垣には、

スイトピーの赤、白、紫、

そして美桜の好きなピンク綺麗に

手入れされた庭。


しかし美桜に今はスイトピーの花が


「Www海老🍤フライに見える。」

あー腹減ってんなー

今、スーパに食用の花、あるよね〜、

・・・これ食べられる?


庭に咲き誇る花を見て生唾がゴクッ

あ〜こんな事ならカフェにいた時

食べときゃよかった ˟ ⌑ ˟ アーア、ホットサンドもピラフも、スパゲッテイも・・・


美桜の頭の中、に浮かんでは

消えるカフェメニュー‼


芝生の上でゴロン。

空には満天の星

ママ心配してるだろうな、


「ごめんなさい。」


凄く寂しくなって

涙が頬をつたう。


そんなセンチメンタルな気分を

壊す様にザワザワと沢山の人の

気配がする。


美桜は咄嗟にスイトピーの後に

隠れた、会話は良く聞こえてくるが、理解できない。


“レイモンド“

と言う固有名詞は聞き取れた。

大きな月に照らされウルフカットの

切れ長の目、背は183か?もっと

高いかも知れない。

そんなイケメンな彼が振り向いた。


ウワァァ!!*♡^♡*カッコイイ!


スイトピーのツルの隙間から覗く

美桜は彼のイケメンさにハートを

飛ばしたが・・・ん?・・・


よく見ると美桜の夢の中に最近

頻繁に出てくるケインと

自分が呼ぶ彼に姿が似ている。


いっも、泣きながら自分がさけぶ

「ケイン、ケイン」

振り向く彼は顔が分からない。


ただの夢と、今までは思っていた

しかし彼を見た途端

懐かしさが込み上げてくる。


今にも駆け寄り抱きしめて欲しい

程に、この感情は何処から来るのだろう。

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