09 本契約について



「おい、泣き虫女」

「私にはちゃんと両親からもらた名前があるわ」

「知らねぇし。つーか、その両親はお前を拒絶したんじゃないのかよ」


 バルドの言葉で思い出す。

 追手に追いかけられる前にみた、両親の表情を。


 二人の名前を呼んで駆け寄ろうとした私を、汚らわしい物を見る様な目で見て、その場から離れようとした事を。


 毎日のように「私を愛してる」「愛しい娘」だって言っていたのに。


「このままでもいいが、本契約しねぇと本来の力が出せねぇ。だから契約しろ、俺と」

「契約? それをすると、どうなるの?」

「力が強くなる以外の異変は起こらねぇよ。ただ、俺達は二人で一人って扱いになるから、お前が死んだら俺も死ぬし、俺が死んだらお前も死んじまうけどな」

「そんなっ、そんなのだめ!」


 禁術使いとして追いかけ回されるだろう私と一緒に死んでしまう彼の姿を想像して、首を振る。


 不幸になるのは私だけで良い。

 彼の言動に思う所がないわけではないけれど、たとえ召喚獣でも、他の人を巻き込みたくなかった。


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