02 逃亡



「はぁっ、はぁっ。誰かっ、誰かっ助けてっ!」


 大勢の人から武器を向けられて、殺されそうになる。そんな恐怖が胸を締め付ける。


 遺跡から命からがら逃げてきたものの、生きた心地がしなかった。


 今までの人生の中でこれほど必死に走った事があるだろうか。


 長時間走る事に向かない靴はとうに脱げていて、足は傷だらけになっていた。

 豪奢な飾りのついた服はあちこち敗れてしまい、今はすっかり身軽になってしまっている。


 不意に地面の凸凹に躓いて転ぶ。


「いたっ!」


 土にまみれた自分の姿が哀れでしょうがなかった。


「ああっ、神様。私は何か悪い事をしたのでしょうか」


 人より豪華な生活をおくり、裕福な暮らしをしてきたが、誰かを殺めたり罪を犯した事など一度もなかった。


「みつかったか!?」

「いや」

「逃がしてはならない、何としてでも捕まえるんだ!」


 自分の境遇に嘆いて涙を流していると、遠くから追手の声が聞こえて来た。


 心臓が跳ねて、爆発しそうになる。


 痛みに涙を流している暇も、失った物にながながと感傷を抱いている暇もない。

 私は悲鳴を漏らすのをこらえて、再び走り出した。


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